2010年マイベストBLコミックスcl。
こんばんわ。今年は思うように更新できないにもホドがある一年でしたがハッキリ言っていつの間に10年が過ぎたのかと思いました。せっかく10代目の「10」がついたおめでたい年なのに残念です。でも今年初めてリボコン(4)行ったんですよ。東京まで遠かったけど新幹線恐かったけどニットのワンピ着てオカマ度を上げてサンシャイン60でロックオン仕様に見せかけたしょぼい望遠鏡写メしたり乙女ロード散策して「ふぅんこんなもんかー世の中つくづく普通だなぁ」と思ったりして一人で遊びました。10月10日はもちろん10代目のおめでたい日なので大阪で衛星放送を映画館で見たり、ごっきゅんが「10」にちゃんと目をつけてフィーバーしてて嬉しかったです。さすがは獄寺魂だな、そう思いました。リボアニが終わったのでアンニュイな年でもあります。何も出来なかったや・・・。せっかくの10年なのにね。。。
そんなわけで今回もヤッツケ仕事のベストBLコミックス紹介です。例によって発売月日順の羅列です。
☆ネ タ バ レ★
- 作者: 富士山ひょうた
- 出版社/メーカー: フロンティアワークス
- 発売日: 2010/01/22
- メディア: コミック
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きみにあげる。 (ミリオンコミックス CRAFT SERIES 34)
- 作者: 槇えびし
- 出版社/メーカー: 大洋図書
- 発売日: 2010/01/30
- メディア: コミック
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借金取りから逃亡中の攻めは成り行きでその店に住み込みさせてもらうのだけど、元ヤクザが経営してるお店は偏屈なオッサン以外客がいない。そこで地元住民の心を開くのは相手に対してストレート(ええ、ゲイなのに「ストレート」笑 )な好意を示す攻め。なんだか朝の連ドラみたいw でも結局そんな上手くいく話でもなかったりする。人間関係って土地に根ざしてると余計大変。
自分に負い目のある受けは自分に対する恐怖も好意も警戒も全ての感情を受け止めるから、余計に。
このお話はどこかそういう人と人との壁みたいなものを受け入れてる。だから逃げることを辞さない。だって人との繋がりって実はかえって人を孤独にさせたり、いいことばかりじゃない複雑なモノだもの。
元ヤクザということで、借金持ちということで、居場所のない彼ら。おたがい「フツウ」じゃない彼ら。嵐の日に逃げたところをたまたま入った茶店で「きみにあげる」と言われた席に座る攻め。「男なのに男の君が好きです。僕だってフツウじゃないって言われてきた。君はそんな僕(堅気)をフツウだと言ってくれた。受け入れてくれた」。フツウの定義は複数の基準ごとに違うから、ゲイであろうと堅気という点で(は)フツウと言われても当たり前の話なんだけど、恐る恐る相手を信じる努力を始めた彼らだからこそ再出発できるんだろう。仲良くね。
- 作者: テラシマ
- 出版社/メーカー: ソフトライン 東京漫画社
- 発売日: 2010/02/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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美人歯科医の双子の妹の「試してるんでしょう彼のこと 試してくじけた彼をつまらない男にして見下して終わらせたいのよ」とか。
美人歯科医師の知人の「あの子のことを理解しようとしてくれてる?それはとんだ思い上がりだ 理解が信頼を築くと思ってるようなら勘違い甚だしい」とか。
脇キャラの台詞も効いてくる。
しかし一つ不可解なんだが、美人歯科医師は自分とクリソツな妹で自分に付きまとう男をフェイドアウトさせてたようだが、成功しちゃったら妹さんはどうなるんだろう・・・(−−;妹さん守って生きていくんじゃないのかい。
- 作者: 柊のぞむ
- 出版社/メーカー: 茜新社
- 発売日: 2010/04/16
- メディア: コミック
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鋼鉄のベイビー・リーフ (バーズコミックス リンクスコレクション)
- 作者: スナエハタ
- 出版社/メーカー: 幻冬舎コミックス
- 発売日: 2010/04/24
- メディア: コミック
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半分騙し打ちで二人きりの部屋に連れ込んで、まんまるコロコロな犬と戯れる受けの様をあははうふふって言いながら写メする先輩、、、楽しげだがとっても気持ち悪いw
でもBLによくある、「ノンケなのに好きになってしまった、そんな理屈を超えた感情が恋・・・」みたいなモノローグがきゃーやめちくりー!って思った。
- 作者: 雲田はるこ
- 出版社/メーカー: ソフトライン 東京漫画社
- 発売日: 2010/06/20
- メディア: コミック
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表題作以外もすっごい良かった。カマバーで働く受けタンは女の子になりたい。好きな男もいる。ちゃんと女の子の体(って一体何?)になって告白したいな。けど彼はゲイだった・・・。性別移行を勧めつつ、男としての自分を好く彼・・・。
「あたしの性別は、いつだってあたしの邪魔をする」みたいな格好いい台詞一っぺん言ってみてーー!!でも性自認ってそんな愛で割り切れるのかな!?
もういっこの短編も旅モノでやさぐれた話だけど最後は胸がほっこりするお話だった。亡き母の生まれた地を行く男と、恨んでいる父を殺しに行く男。やっぱり旅の終わりには何てことはない新たな人生が待ってる。
- 作者: 日高ショーコ
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2010/06/25
- メディア: コミック
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- 作者: 倫敦巴里子
- 出版社/メーカー: 海王社
- 発売日: 2010/07/09
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あと、前年から続いてる『長生き猫』シリーズが良かった。「あの人たちは君を受け入れてるわけじゃないよ 君を受け入れる自分が好きなだけだ」って台詞がこの方らしくて秀逸。高遠さんの酷いくらいに (ガッシュ文庫)でもそゆ話あったよね。「障害者に優しい自分が好きなだけ、優しくするな、酷くしてほしい」って声に含まれる批判性は大事だと思う。ただ、批判に頷きつつも、そゆ声さえ私たちは悲恋として面白おかしく消費する、そんなジレンマを自覚すべきだよな。その声は悲しみの嘆きではなく、怒りの叫び。告発の怒声。
ところでばあちゃんは自分で名前をつけて呼ぶべきだったと思う。
- 作者: 草間さかえ
- 出版社/メーカー: コアマガジン
- 発売日: 2010/08/25
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カバー裏漫画で、世にも珍しい犬のオカマが出てて面白かった。だけどチンポがなけりゃ女って考えは間違いだと思うよ、草間さん。
イケメン君とさえない君 (IDコミックス GATEAUコミックス)
- 作者: 秀良子
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2010/08/12
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さえない君の体に乗り移ったイケメン君の亡霊彼女。彼女が乗り移ってる時間の描写が基本的にないせいで、BLに肝心の男同士の気持ちの変化が見えづらい。だからこそ三人の物語って感じがしたのが良かった。
彼女は女として遊園地に行き、イケメン君と手を繋ぐんだけど、周囲には同性カップルに見られる。ここらへんの描写が鋭かった。
「彼女は戻らなかった 悪意のない好奇の目に彼女はどんな現実をみたんだろう」
恋愛において大事なこと、を描いた話じゃなくって、子供の頃からある好きな子の笑顔を見たいとか皆一緒に仲良くしたいねって絆だとか、やんわりと描いた話だと思う。
ところでこのさえない君なにかに似てると思ったけど、げっ歯目だ…。
- 作者: 楢崎壮太
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2010/09/25
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僕の先輩 (ミリオンコミックス CRAFT SERIES 40)
- 作者: 羽生山へび子
- 出版社/メーカー: 大洋図書
- 発売日: 2010/10/16
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多くは語らん。氏のサイトはこちら。http://urasnakeship.cool.ne.jp/index.htm
さきっちょだけでも (バンブーコミックス 麗人セレクション)
- 作者: トジツキ ハジメ
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2010/10/27
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ネクタイとカマキリ ((ジュネットコミックス チェリーシリーズ))
- 作者: アユヤマネ
- 出版社/メーカー: ジュネット
- 発売日: 2010/11/26
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今回はBLの王道パターンをゆく感じだけど、絵本のようなタッチに漂う生活感に細やかなディティールを感じるアユヤマネ作風は変わらず、春夏秋冬それぞれのオムニバスストーリー。
今年のものを挙げてて思ったんだけど、二人の関係を繋ぎがたくするモノに対して彼らの持ちうる武器というのは、けっきょくそれを度外視できるだけの恋愛感情、より「強い」愛でしかないのだな、ということ。じゃあ、愛のない人間は?
壁と呼ばれるものに阻まれるのが合理で道理な帰結とでも言うんだろうか。
フツウじゃない、だから苦しい。そんなふうに思わせる「普通」なら、捨ててしまえ。普通じゃない部分を許す権利があるのは普通である俺たちだ、そういう人間を数多く見てきた。でもそれは思い上がりだ。自分が普通だから相手が普通じゃなくなる、ということなら、自分は普通ではなくなればいい。それだけのことを私たちは成せないまま、ただ他人事として鑑賞して勝手に同情したり共感したりする。そして普通じゃないものをこそ、普通でないからこそ、『ソレ』であるからこそ価値があるのだと、答える必要がある。
春。
職場の先輩夏木は虫が苦手。部屋にカマキリがいて帰りたくても帰れない自宅。そんなとき、後輩の常田に助けてもらった縁で仲良くなる二人。カマキリにおびえる夏樹に常田は「いつでも呼んで下さい、すっ飛んできますから」と笑う。常田はノンケだが、夏木の告白に胸を熱くさせ、二人は付き合いはじめた。カマキリが恐い、それを男らしくないと笑う人がいるだろう。夏木はゲイでストレートな『家庭』を持つことに無理がある。法事で帰省したところ、夏木は親戚の叔父さん連中につかまるのを恐れて家事の手伝いなどしていたようだが、婦人に「男の人はどうか座っててください」と頼まれたのでは断れない。結婚し子供を作らないことについて「一時は荒れてた弟にさき越されたな、いくら立派な会社に勤めてようと家庭を持てないようじゃ男として・・・」と言われる始末。夏木は言う。「結婚することが子供を作ることがそんなに偉いか。そんなこと猫にだって出来る」。たしかに、何が偉いのだろう。
ただ、妊娠出産するのはある種命がけの行為でリスキーなもの。それを男連中だけの酒の席で偉そうに自分の成果として語ったり、猫にでも出来るのにと悪づくこの環境は、ぐにもつかない。
夏木は思い余って電話口から別れ話を持ちかける。次の日常田は彼を捕まえ話をする。「普通の人生に戻った方が楽に過ごせる」けど、とっくに「手遅れ」。カマキリにおびえる彼の顔に惚れたのだから・・・。「つらくなったらいつでも呼んでくれなくちゃ、そんで存分にその情けない顔を見せてよ」。常田は男らしさから排除された男を、男らしくない部分をもって愛するのだ。その愛の強さが、「普通」の生活を捨てさせる。守るべき家庭がある証拠として結婚指輪を「男の人生」なんて思えるノンケの常田は、どこかで男らしさを損なわない強さがある。それゆえに彼はBL文法においても攻めでありえるんだろう。受け攻めというのは擬似男女関係的だけど、その男性役割によってゲイの夏木が肯定されるというのは、なんとも妙なことだ。
夏。
アルバイト仲間の柳瀬と加古。加古には生まれつき肌の血管が密集して痣が出来ている。普通ではない肌。子供の頃から良い行いをしたら魔法で美しくなる絵本などを見て良い子を振舞う加古に柳瀬は「魔法みたいにはいかないけど、そりゃ最初は驚いたよ、けど加古君のいい所いっぱい知ったりするとほとんど忘れてるんだ」と言うけど、じゃあなぜバイト先の店長には「客の見えるところに出てきちゃ気持ち悪がらせるだろう」などと言われなきゃいけないんだろう。電車でこどもに微笑みかけてもおびえられなきゃいけないんだろう。良い所を知ったから忘れる、というのであれば、加古がコミュニケーション能力のない性格の悪い人間であれば、ことあるごとに「あいつの肌は・・・」と思い出されると言うことだろうか?誉められるような良い人間性なんて。
ただ、柳瀬はこうも言った。「僕には可愛く見える、はじめて会ったとき笑った顔が桃の花みたいで可憐だなぁって」。普通ではないその肌こそを、美しいと、言った。このシーンで笑顔のバックには桃の花が効果演出として描かれてるが、その花模様はまだらで、まるで加古の肌のようだ。モノクロの漫画からも桃色の肌がどんな色か分かる。
秋。
昔の専門同級生、かつての恋人だった悠吾が突然姿を現した。睦はホモとして生きて行けないと悠吾を振っていたのだ。今は彼女もいる。望んだ「普通で平凡な生活」を得てる。「どこにでもいそうな女だ」と悠吾が言うと、「俺には大切な女だ」。すると「だろうよ、『普通の人生』を送るための大事な小道具」と返す。・・・これまで読んだBLでも似た話があったけど、つまりはそういうことなんだと思う。異性愛を普通だと語るとき、それは女を小道具にする展開を要請した。
悠吾が現れきしむ関係。けっきょく彼女とも別れることになる。睦は嘆く。「悠吾のせいだ、俺は普通で平凡で平和に暮らしていたいのに」。だけど悠吾は「平凡に暮らせばいいだろ、俺と一緒に・・・」。しかしそこで普通、とは言わなかった。
冬。
大学生の三好は教授の自宅に家政婦として雇ってもらいに行った。言葉遣いがなってない三好にも厳しい教授だが、じょじょに打ち解けてゆく二人。ある日三好宛の手紙が届く。入院先の医師である男と蒸発した母親からだ。彼は母を赦すことができない。しかし教授もまた赦すことが出来なかった過去がある。彼はゲイであることで父親から勘当された身で、父が病気になっても父が会いたがっても見舞いに行かず、死別した。そうすることで彼は赦さなかった代わりに今度は自分が赦されない罪を背負わされたんだと言う。
「我らに罪を犯すものを我らが赦すごとく我らの罪をも赦したまえ」
昔三好が母に連れられていた教会で教わった言葉だ。
「あれは誰かを赦すことでその誰かを憎しみ続ける罪から解放されようってことだったのかも」。
罪は、なんだったろう?
普通ではない自分が罪だったのか、子を勘当した親が罪だったのか、拒むことが罪だったのか。あるいは苦しまざるを得ない選択が罪だったのか。分からない。
ただ、唯一罪は自分の中にあるのかもしれない。その罪を裁くのも赦すのも、自分自身でしかないとするなら、誰も他人を赦したり赦さない権利など、ない。
ということなんだろうか?
・・・ところで三好は母と駆け落ちした年上の男のことが好きだったようで、教授も最初からタイプだったらしい。母に好きな男性を取られた三好も、こうして同じく年上の先生をつかまえてしまうのだから、どっちも何も言えそうにないね。
他にも色々紹介しようと思った作品はあるんだけど、もう疲れちゃったからまた今度ね。
じゃ。