「隣の」でつぶやきレビュー。

隣りの (MARBLE COMICS)

• あらすじ。

引っ越してきた当日に隣人・東大寺のホモキス現場を目撃してしまった沢田。
あまり関わらないでおこうと思っていたが、鍵を忘れ困っていたところを世話になり、それ以来何かと身の回りの面倒を見てもらうことに。
口は悪いし意地も悪い。でも実は優しい東大寺と接する内にノンケだった筈の沢田の気持ちは変化を始め…。

男らしいのに可愛くて、エッチなのに超純情♥
話題彷彿のNewエロスター☆腰乃のデビューコミックスが遂に登場！
天然鬼畜系上司に翻弄されちゃうガチホモ部下の番外編も収録。
超必読のエロ可愛い描き下ろし付き！

• 帯。

「あんたゲイじゃないでしょ？」
ノンケのリーマンが遊び人のゲイに恋をした
「…じゃあ今からなる」

何とタイムリーな帯…。

BLレビュー。＋nodada's eye.

↑と言いますのも、先日私攻め/受けのセクシュアルアイデンティティーとBLの物語性。 - 腐男子じゃないけど、ゲイじゃないという記事で『性の問題』or『愛の問題』としてのセクシュアルアイデンティティーという軸を(暫定的に)提示してみたんですよ。私見では、BLの物語性はどこか『性の問題』としての（…すなわちパーソナリティに関する問題としての）セクシュアリティ描写を隠避していると感じるんですね。皆さん、良くも悪くも目の前の恋愛にしか目が行かないようで、自分の同性愛ポリティクスとその扱いに対する痛み等が若干薄く、恋愛情緒的な痛み等しか訴えない部分があるような気がしてならない。
帯も一見ソレと同様な内容に思えますが、しかし、この作品は若干趣が違うようです。
で、感想ですが…これは大変面白かった！正直この作品の味わいを伝えるだけの技術が私にはないので、久しぶりにTBをさせていただきます。

『隣の』/腰乃 | ゲイ＆腐男子のＢＬ読書ブログ

「男らしい」とは縁が無くも、典型的な攻受とは異なり、
現代的と感じられる希薄さが漂う空気が現実的です。

とaya-meさんが仰るように、何だか掴みどころのない「空気」が独特でした。
la aqua vita 隣りの
そしてtatsukiさん、ごめんなさい。ワタクシ、萌えは独り占めより腐教したい派なのですｗ

私の場合、腰乃さんはマガビー（冬休み号）で知った口なんですが、この方の描くキャラクターはなんだかとてもキモくて変態なんですよね！（特に目が！興奮しすぎで爛々と輝いてる！）
と言っても今回は私が予想していた作風とは少し違ったけれど、私好みであることに違いなし！
まず、皆確かに受け/攻めではあるけれど、結局ペニス挿入するか否かだけの違い以外にはナカナカ判別しづらく（そして、素股や手コキ合いなど挿入がないセックスも多い）、もはやそういう分け方自体が二の次になる感じ。そんでもって、彼らはよく泣きます！私は受けしか頬染め＆落涙をしないBLは嫌いなのですが、彼らはセックスが気持ち良過ぎるとよく泣き、また恋に凹むとよく泣く感情型…。高揚感のあるセックスシーンはとってもキモ可愛いです☆
んでもって、セックスと恋に対して、ゲイもノンケも総じて流され易い！あと、口調も可愛い。感じているときの「ＹＥＳ」は「うぃ」…。お前らフランス人か。
そうそう、言われてみれば確かに、ケチョンケチョンでラブリーな絵柄だけどペニスの描写がさわやかなくらいに露骨で乙ｖ

…ところで、皆さん。ノンケ男子を見ていて「ノンケってホモ臭ー」と思われたことはありませんか？＜ノンケ＞に見る、あの如何わしさや無防備な隙を、ファンタスティックに＜ホモ＞に変換しちゃう作家を私は知っています。あのＭ先生デス(私の腐ルーツなので伏せる)。腰乃作品を見ると既視感が…。
と言うわけで、奇妙な現実感と変態さと純情っぷりがなんとも美味しいＢＬコミックスでした！今後も注目の作家であること間違いなしでしょう！ご馳走様でした♪

素で以下ネタバレ。そして長い（読む人いるのか？）。

コンビニ店長と落ちる男１、２

コンビニ店長として仕事に忙殺され、現在ときめきのない日々を送っている犬丸と、告白した男とセックスする手前に男の彼女が部屋に来たためにベランダから突き落とされてコンビニ前に降って来た桜。半裸の状態だったために、犬丸は店の裏に彼を迎えて服を貸す。そこで泣きながら「告ってokだったから嬉しかったのに、やっぱり遊びだったんだ、こんな扱い受けるのってオレが男だから？」と愚痴り出す桜。果てしなくウザいです。ですが、「ホモの間男」にドン引きだった犬丸もあまりの号泣の様に戸惑い、仕方なく桜を慰める。したら何となく妙な雰囲気になって（桜に急に迫られて）レッツ・フェラタイム！唐突過ぎます。

なんでいきなりこんな…　さっきまで泣いてたくせに　純情なのか淫乱なのかわけわかんね

…面白いのが、店長さんの流され易さ。与えられた快感と桜の熱い感情、それらのインパクトで即効落ちてますよ！
さて、桜が告白した男ですが、後日、言うに事欠いてこんな事をのたまいます。

「だって男と逢引してましたなんて言えないだろ？お前だってばれなくてよかったじゃない」

ソレに対する桜の怒り。

「今のはさすがに許せないし悲しい　と言うか残ってた未練が尽きた　俺は俺のことを恥ずかしい存在だと思ってる奴と付き合いたくなんてない　さようならだ　今まであんがとよ」

ココですっ。ここが『性の問題』に触れているだろうセクシュアリティ描写だと思うんですね。男の言い分に頷くキャラクタもいるけれど、この台詞ってあんまりですよね。ちゃんと「ゲイ」の＜痛み＞を描きつつ、「受け」個人のプライドではなく「ゲイ」プライドを救い上げてくれるＢＬは、稀有だと思いました（まあ他にもある事はあるけど、如何せん切れ味が悪い）。
そして犬丸さんは、『攻め』の役割をキチンと果たしてくれます。

「桜さん、あんた自分で思ってるほど悪くない　かっこいいよ　安売りする必要ないし　へこむことも悲しむこともない　自信持っていい」

こうしてノンケのコンビニ店長さんは、トキメキの在る日々を手に入れたのです、めでたしめでたし。
…とはいかず、２話目ではノンケの持つ、ゲイセックスへの戸惑いが描かれます。
桜は犬丸のリアクションにキレちゃいそうになります。

チンコ？あるに決まってんじゃん　おっぱい？ないに決まってんじゃん　キスはいいけど体は駄目なのとかそーいう事か？
【…】
よく考えてみ　あっち真っさらストレートノンケだったじゃん　当たり前の事じゃね？普通引くって
（俺だって女の体触ったら多分びくってなる…）

とここではゲイセックスに対するノンケの抵抗感は「普通」と表象されます。それはゲイというモノセクシュアル（一つの性にのみ性的指向が向いている性愛）が異性に対して抵抗があることと同様だと位置づけられている。
はい、次の引用は犬丸の言い分。ノンケへの配慮がなかったと詫びる桜に対して犬丸はあわてて弁明する。

「謝んなきゃなんないの俺なんでちょっと待って〔…〕驚いたっつうかまじでびびちゃって　あんなどー考えてもひでー避け方しちまった　あれなんかついてる？あれすんげー真っ平ら？なんでだっけ？あ！男の体だ！みたいな…　違くて…えと　あのこれ変なイミじゃなくて素でびっくりしたってだけで　軽率だった　ごめんなさい」

とまあちょっとトッチラかっているのだけれど、要するに犬丸は今までのノンケとしての経験しか持たず、男性身体の性的接触に不慣れだった（故に戸惑っただけで不快感はなかった）と弁明しているワケ。
この性観念の表れは、先の桜の「ゲイの俺だって女には抵抗があるだろう」という告白により同列に置かれ、「よってこの抵抗感は男性嫌悪でもなければホモフォビアでもない」と示される。

さて、私は今までもBLを読むなかで「ここに描かれた感情はホモフォビアか男性嫌悪か、あるいはその他のものか」と判別つかずに、迷う事が多々あった。ちょっとタイムリーな記事があったので密かに紹介するけれどmacska dot org » 北米社会哲学学会報告１／性的指向、ホモフォビアと、ディスオリエンテーションの可能性では「純粋なホモフォビア」という表現が使われていて、シナリオに見られた「不快感」が何により生み出された感情なのか判別が困難と説明されている（同感）。さらに「純粋なホモフォビア」を抽出するとしたら、その経験とはすなわち、“同性愛という以外はマジョリティである人間”の極めて狭い範囲の経験を特権化しているに過ぎないと指摘されている。それと併せて、レズビアンへのホモフォビアが異性愛規範によるものだけでなく女性への規範とも絡み合い構築されている（そして、分けて考えるべきではない）ことも、忘れられない指摘。
つまり、犬丸のゲイセックスへの抵抗感（ここではあくまで「不快感」ではないとされる）も、反射的なホモフォビアとノンケの不慣れさのどちらが原因かは判断が困難。
―ただ、私は「ゲイ・レズビアンの持つ異性間セックスへの抵抗感」と「ノンケ（と言うかこの場合へテロ）の持つ同性間セックスへの抵抗感」は異なる構築性があると考えているのね。それは社会性に関する事項なので、たとえシナリオに描かれた感情の意味を認識出来なくても変わらないです。たとえば、「同性愛者が抑圧されている現場で彼彼女らを庇おうものなら、庇った人も同性愛者に見なされて抑圧されかねない」といったケース等がある中で、同性愛を嫌悪することは社会的に要請されていると言える。これは異性愛にはないことだろう。二つの性愛に対する嫌悪感とは、明らかに非対称的なのだ。この点が二つのモノセクシュアリティの間で隠れて（有耶無耶にされて）しまっているのが興味深かったです。

ともあれ、二人は最高に気持ちよさそうなセックスを実際行っているのだから、彼らにとってその事は瑣末な事だったのかもしれない。
にしても、ノンケがゲイに対して大変紳士的なお話で、とても美味しかったです（＾Ш＾b

熱の線上

高校生モノ。二人は同級生で友達。茂の兄に影響されて授業をサボりだす国雄。茂は以前女性に同意のない性行為を迫られ（彼自身はレイプと捉えていない様子）、国雄より先に童貞を捨てているのだけど、それを知って国雄は「置いてかれている」と感じているみたい。…彼らはきっと様々な理由で性的なことに恐れを感じている。大事なことを大事な人と一緒に出来る、そんなハッピーエンド。

誤解の先

再会モノ。高校時代に告白して振られた先輩（西島）に再会した後輩君（川端）。後輩君は喜びモーションをかけるが、相手はその気がありそうなのに気持ちに応えてくれない。

西島「俺、男が好きだ」
川端「は？　…んじゃ何の問題もないんじゃ　お、おれ　好みじゃないすか？」
西「違う、だからお前のそれは多分違うんだ　あんじゃん　ほら　学校行ってる頃って同性のがいいって時が　お前は多分そっち組　俺、子供の頃からずっと男ばっか好きで悩んでたの　高校ん時お前になついてもらえて気分良かった　卒業しちまったら終わりかー…とか思ってたら　お前すげーはっきり俺に好きとか言ってくんだもん　性癖に悩んでる俺って何みたいな？　告白とかされて嬉しいのにむかっ腹立つみたいな？」

これも、私が読んできたBLにはないゲイ像でした。こういう、ゲイアイデンティティーを持って生きてきました！って感じられる心理描写はほとんどなかったので、すごくありがたいです。（ゲイが同性愛を代表するとき、そのゲイがプラウドでないことで、その他のクィアの表象にもネガティブな影響をもたらすので）
そんでもって、後輩くんが奇妙。「今は彼女いません」となぜか彼女限定で話を進めるのに「やっぱり俺の好みってこの人が元だよな」とか言っててすごい変。ＨＥＮ！

…西島先輩、利己的な「虫のよさ」って部分は誰しもあるけれど、それに自覚的な人はそれほど悪人ではないと思うんだよー。

彼らの「お邪魔」をしちゃったときの、部長の冷静な反応が超ウケた。

よく考えよう
お金に無計画な上司が部下に一月分の給料で買われるお話。…あのさ、いきなりこんな買い方する攻めもすごいけど、金欠だからってホイホイ買われちゃう受けも相当キレてるよな。だって、それだけの身体的価値とプレイを要求されるって事だし。そんなキレちゃった二人だからか、即刻セックスしちゃうのです。ちなみに上司さんは風俗でアナルは開発済みらしく、アナルセックスにひどく感じているらしい…。
…部下も言っていますが、流されてます。。。キレた人って面白いですねー。

隣の１，２
表題作。…ここでもあまりお目にかからない、ノンケ嫌いなゲイ！

「失礼なのはお互い様だろ　夜道で前歩ってる女みてーに緊張してんじゃ　誰も襲ったりしねっつの〔…〕俺はゲイだけど男が好きなんじゃなくて好みの男が好きなの　わかる？　そんであんたは俺の好みじゃねーの　わかる？　だから俺はあんたをヤリ目線で見てたりなんてことはねーの　わかる？　会うたんびにビクつかれっと派手にむかつくからやめてちょーだい　俺はケダモノでもゴーカン魔でもありません」

ｗｗｗｗｗｗｗ
ラリホー★＼（・∀・）／☆
いやぁ、ゲイってどこか自分とは違うのですが、こんなに共感できるゲイキャラクターはなかなかお目にかかりませんでしたよ。具体的なところで言うと、淡々と語ってるくせに「地味にむかつく」んじゃなくて「派手にむかつく」とはっきり仰る嫌味っぷりとかが（＞з＜ﾉｼ
勿論共感しないところもあって（って、ゲイじゃないからある意味当たり前だが）、私は「好みの男」が好きなんじゃなくて「男」ってジェンダーのフェチだからー。

このお話の面白いのは、上のようにはっきりと戦力外通告（笑）を受けたノンケさんが何を思ったか、相手にかまわれたいと考え出すところ。

「だって俺だけ相手にされてねーのはなんかむかつくってか　それで…」
「いやあんたゲイじゃないんでしょ？むかつく言われても困るよ」
「―――……ゲイだったらいいんだな？じゃあ今からなるそれだったらいいだろ」
「ちょっと…なにそんな必死になってんのよ」
「俺だって訳わかんえーよ　でもあんたみたいな人に無視られんのはかなし」

…なんだこのノンケ！！！ノンケの抱く「いい人」への友情と、男への愛情がごっちゃ混ぜになって、終いにはヘテロセクシュアルが揺らいじまってるＺＥ☆
そしてそんな一生懸命な受け（？）の純情が、ゲイの気持ちを傾かせるのです…。なんつー無茶苦茶、なんつーホモ。ワンダフルワールドですな。愛は地球を揺るがす！もうわけがわかりません。

幸せなら手をつなごう

『隣の』、のサイドストーリー。あら、オヤジ攻めなのね。ていうか、最初自分から誘っておいて（読者すら気づかぬうちに）いつの間にか夢中になり、しかしオナホ扱いされてポロポロ泣く男…って、、、、もう、、、たらしこむはずがたらしこまれるとかっ…可愛いわ！情けないわ！

ところで私も課長のこと妖怪かと思った。特に目が、ギョロンって。コワス。

もう、なんかお腹いっぱいになっちゃった…*(´▽｀)*

ネチっこくて濃いけどオススメですー。