愛と云う名の権利。

最近積ん読減らそうと、以前に購入した方の奴読んでます。今日のは鬼畜攻め×強情+健気受け。極道モノ(苦手)←なら買うな。

帯付きなので紹介。(すんな。)

極道の組長と友禅絵師の劇愛!
「てめぇの達き顔を、たっぷり見せてもらおうか」
追い詰められる…嬌艶な恋情

紅蓮の華 (ガッシュ文庫)

紅蓮の華 (ガッシュ文庫)

一馬友巳さんの絵は素敵だなぁ。

以下ネタバレ。

『裏切り者としての制裁』
それが、恥辱に貶められる始まりだった。友禅工房の絵師・重は父を殺された過去を持つ。父の仇を探るため極道の組長・不動の元にいるが、いつしかそれは淡い恋へと変わり、忠誠を誓っていた。だが、不動が狙撃され、重が犯人と疑われたことから、重の立場が変わった。「てめぇが誰のもんか、じっくり分からせてやる」麻紐で縛り付けられた滑らかな白い肌に友禅を纏わされ、その日本人形のような姿を視姦される。蜜口を練り香で塞がれ、絵筆で嬲られる。紅蓮の炎に身を焦がし、心は痛みにむせび泣く…。

・・・あらすじ背表紙から。(視姦て字が変換できないなんて・・・。)
300pに近いチョイ長め話。


このあらすじなんだけどさ、悪いけどこれ読む限りそういう復讐の鬼的な話じゃないっぽくて違和感。だって、最初は受けが高校生のときの話から始まって、そのとき出会った攻めとの交流の末、成り行きで組みに出入りするようになったって感じなんだもん。
構成の問題だけど、これなら最初から6年後のエピソード入れといて、数ページ後になって回想として高校生の頃の馴れ初め(ではないけれど)を書いたほうがあらすじどおりの印象を持てて美味かったと思う。


受けは重(かさね)という高校生だった人。この人が、友禅絵師であった父を殺されて金もなく、病気の妹の治療費をなんとか工面しようとして、借金とりに売りをさせられそうだったところをひょんなことから攻めに助けられ、そして挑発をし合う中いつの間にやら速攻で攻め相手に売りをする羽目になった。いささか不憫すぎるBLにはありがちな受け君。


彼に抱かれることになった受けだったが、売りをしてると思い込まれて攻めに買われることになったのに、最中、初心者である事がばれて、それからは優しく抱かれるようになる。


はじめは、自分が性の対象になるなどと云うのにショックを持っていたが、惚れ惚れするような男に抱かれ、初めての悦楽を味わう受け。男同士の欲望に対するハードルはさほど高く仕切られていない。

 初めての男だということに、感慨を覚えるほど情緒ある人間のつもりはないが、一抹の寂しさを感じるのは、…彼が自分の憧れるすべてを持った、男だからかもしれない。
 頑健な体躯に、自信に溢れた態度、男らしく野性的な身体…。それに引き換え重は、華奢で肉付きも薄く、艶かしいと形容される肌に、艶やかな口唇、どれをとっても野性味溢れる男とは言い難い。
 バチリ…。男が腕に時計を嵌める。その仕草も洗練されていた。
 場末の、安っぽいそれ目的のホテルでは、その存在は浮き上がって見える。
 彼の恋人ならば、こんな場所に連れ込まれたりはせず、もっと高級な場所に連れて行かれるだろう。スイートくらい取るかもしれない。だが、重は薄い毛布とシーツにくるまれ、ぎしぎし音を立てるスプリングの上で、初めて彼に抱かれた。
 …惨めさがこみ上げる。それでも悪い想い出にならないのは、彼が極上の男だからだ。
 「俺は仕事があるから、先に行く。お前の体を洗ってやってもよかったんだが、あんまり気持ちよささげに寝てるからな。起こせなかった。」
 「…そう。」
 父を亡くしてからずっと、重はゆっくり眠ることがなかった。だが昨夜は広く暖かい胸に、ずっと包まれていたような気がする。そのせいか、重はうなされることもなく、一度も夜に起きることなく、眠ることができた。

男同士の欲望について何の免疫もなかった彼が、このように極上の男の良さを感受し、自覚がないまでも攻めに惹かれているのだ。


極上の男。作者のあとがきでも男の持つ力を前面に出した、とある。


そして、そこから受けと攻めの関係が始まる。なぜか破格の待遇で買ってくれる攻め。そして、彼にどうしようもなく惹かれていく受け。
あの広い胸で得た一瞬の安らぎを、手離せなかったわけではない。
としながらも惹かれる。これは、私から見たら父の夢を見て眠れなかった受けの父への欲望とつながる情ではないかと思うが、あくまでBLとしては、男同士の中で隠される恋情としてのフラグになる。(利用される。)


そこから、紆余曲折あって、不動の組みに入り込むことになるのだが、そこでいきなり6年後の話に移り変わる。そこで、説明として成長した彼等の姿や妹の死などそれまでの経緯が書かれてあるのだが、話の本筋じゃないから仕方ないけどもワリとさっぱりとした説明で話が先に進む。


で、そこからがこのBLのミソだ。この作品はあくまでH中心と見てよいだろう。頭で思い浮かべるだけでも6回Hシーン。これが濃いんだ・・・。


公開プレイに次ぐ、媚薬入りセックス、緊縛プレイ、尿道責め、3P・・・。
うーん。
でもワリと退屈しないで読めたお。
しかし、本作ではやたらと女を強調されていた。女のように・・・、女にさせられる、女・・・・。BLでは、同性愛を描いてる割にとぉっても女は男に抱かれるもの!という強調をしたがる。その中で、受けを、男なのに男に抱かれる、というものとして効果的に演出する。そうしたとき、BLのセックス描写の中ではむしろミソジニーのほうが強いのではないかとすら思えるが、そこらへんはよくわからない。

ただ、本作では、男としての男の妖艶さを引き立ててある。女と言いながら、その実男の猥らな姿の魅力をちゃんと描いてくれてるんだ。作者もあとがきで大和撫子のようだが決して女性らしくはない受けを描いたと言う。男と女のコードを、強調させながら男同士の欲望として利用するんだな。(それは本作に限らない描き方だ。)

 男のものを咥え、唾液の光る紅い口唇、真っ白な肌に上気した頬、そして長い黒髪…着物を着た重は、日本人形のように美しい。それが男の身体の下で、性に使われる道具にされている。気の強い重の眼光はいつも迫力があり、周囲を圧倒するのに、今は潤みきって切なげに歪む。一つに束ねた髪が解け、畳の上に広がる。まるで、少女のような清楚ささえ感じさせる容姿に見える。

「お前は俺に抱かれるためだけにあれ」と攻め追い立てられる。

 「柔らかい肌だ、触り心地もいいな。何から何までお前は、男に抱かれる身体をしてる」
 重がよく言われる言葉だ。背もそれほど低いわけではなく、性格も男としての気概に溢れ、女性らしい印象は微塵もない。なのになぜか、…男の欲情を煽る。
 その気のない男でさえ、重を目にすれば身体の芯を熱くする。それは、重の罪ではない。意識せずとも淫心を掻き立てる、そんな存在である事は、誰も認めたくはないだろう。抱いた男を虜にする身体…。重の意思とは裏腹に。

男に抱かれるための男。それを描くために女のコードを使うのに躊躇われない。


6年前を境に抱かれてなかったのに、今は制裁として受ける恥辱の数々。(嫌だって言っても身体は・・・的。)でも受けは攻めが好きだと自覚していて、忠義を持ってる。たとえ自分が裏切り者として信じてもらえなくても不動の為に最後まで尽くそうとする。身を投げ出して。


最後らへんは、受けが格好良かったけど、話が急ピッチ。そこまで極道甘くないぞ!きっと!


で、最後にあらゆるフラグの謎解きがなされる。妹の死後攻めが受けに囁いた言葉の真意。入りたがっていたのに受けを決して極道の道に入れなかった攻めの真意。6年前から抱かずにいながら、一旦制裁と銘打って抱いた途端酷く抱いたことの真意。フラグの解説ー。
それらすべて、受けへの最高の愛が故。
そういうカタルシスがBL小説の醍醐味なんだよなー。濃いんだー。そういうのが、ほっこり愛に温まる心地がしてウットリときめくんだけども・・・・。(実はそこには多くの隠蔽された傷があるはず。しかし、それをあくまで二人の最上級の愛として昇華(隠蔽)するのがBL的愛の至高。)


そしてこの作品でも特徴的だったのがこれ。

 甘く蕩けるような快楽が、彼の腕の中で訪れる。重は素直に、彼に向かって足を開いた。恥ずかしいけれども、重の蕾は、不動のものなのだ。浮動は重のすべてを、好きに扱っていい。不動はその権利を持っている。

普通に考えて、好きに扱っていい権利など誰も有しない。けれども、そこで彼等の間には絶対的契約が結ばれてある事を、この言葉で表すのだ。


愛という権利が、彼等のすべての情動を導き示す。あらゆる傷を隠蔽しながらも、その愛だけを抽出して最高のカタルシスをもたらす。それが本作で描かれた、彼等の愛なんだな。



相変わらず臭いです。ですが、そうでもしなけりゃ、私視点でレビュー出来たもんじゃありまっせん。