BLの中のレズビアン。

BLの中では多くのゲイが存在します。ただし、男同士でカップルになったからと言って、その全てがゲイアイデンティティー(自分は「ゲイ」である)を持ってる人ばかりではないです。(ていうか今回紹介するキャラは、「ゲイ」というより「ホモ」アイデンティティーがあるように見えるが。)
それと同様に、女同士でカップルになっていてもレズビアンアイデンティティーを持ったキャラクタとは限りませんが、「レズ」アイデンティティー(レズビアンとビアンとそれぞれ何かしら違うのかしらね?)を持ったキャラクタもいるにはいます。ええ、BLの中にも。

しかし、BLは同性愛を題材にしたジャンルであるのに、随分女の方の同性愛の可能性は、(当然といえばそうですが)あまり見られません。一方(男)では、「同性を愛することもあるぜ!」と認めたりしていますが、一方(女)では、異性愛の可能性しかないかのような描写をしてはいないだろうか?そんな疑問を抱いています。本当にBLの中では「同性愛」は「同性愛」なのでしょうか?もしかしたら、BLの(キャラの?)中で言及されてるのは、「同性愛」ではなく、「男性同性愛」なのではないでしょうか?
かく言う私も「同性愛」と聞いてまずイメージするのはゲイだったりします。同性愛、なのに、女性同性愛は何処にいった?という感じです・・・。(視野を広めようっと)
とりあえずBLに登場するレズビアン(のアイデンティティを持ってるかどうかは定かではないが)をちょいとばかし紹介。
以下全部ネタバレ。

負け犬のなんでも屋 (あすかコミックスCL-DX)

負け犬のなんでも屋 (あすかコミックスCL-DX)

ストーリーの概要は、それぞれ挫折を味わった3人の“人生の負け犬”がはじめた<なんでも屋>で起こる事件を描いたもの。
主人公の中川(受け)は以前2度ほど結婚をしております。そして離婚しています。本作では、その最初の妻と、二人目の妻がお付き合いをしてるのです。「女に女を取られた」らしいです、中川。(で、それが人生の汚点なんだってー。で、「この世の男のカタキみたい」だ、なんだってー)
馨とエリカちん。馨は作詞家。エリカはアイドル。で、中川は元作曲家だったのね。馨は、自分がエリカに歌わせるため作った詞に作曲をして欲しくて中川の元を訪ねる。

男三人で騒いでるところ、中川が「今すぐここに女を連れて来い」と叫んでからのシーン。

馨「お・よ・び・か・し・ら」
[・・・]
中川「馨!!おまえは俺の中で女に定義されない!なッ何の用だ」
[・・・]
森田「あのーこの方はいったい・・・」
馨「中川の最初の妻です」
俺の人生の履歴書にはもう一つの項目があった
音大出のぼんぼんだった俺は作詞家だったこの女に見事にだまされ偽装結婚に付き合わされた挙句ポイと捨てられその上アイドルだった美しくかわいらしい歌手の二度目の妻を・・・女にこの女にぶん捕られたのだ
[・・・]
中川「・・・うまくいってるのか?」
馨「まあねもうラブラブのラブで・・・」
中川「・・・あそ」
馨「・・・だけど一つだけ ね 彼女元々ストレートじゃない?男と付き合ったこともあれば男と結婚してたこともある できれば彼女と寝た男を一人一人五寸刻みに刻んでやりたいわね・・・」

(ところで本エントリでは全体的にちょっと登場人物が多いのでセリフに名前付けました。)結構男に対して厳しい物言いをする方です。菅野彰さんの書く女性は大体そんなキャラの人が多い気がする・・・。

中「昔は俺のかわいいエリカだったが・・・そこまでの愛情は俺にはなかった・・・おまえと一緒になれてあいつも幸せだろう」
馨「・・・それがそうでもないのよ うまくいってないの」
中「・・・待て 最初の妻と二度目の妻の不仲の相談を聞く程俺は度量の広い男じゃないぞ」
馨「別料金払うから聞きなさいよ なんでも屋でしょう」
[・・・]
馨「・・・彼女あたしの愛を疑い始めたの」
中「浮気でもしたのか」
馨「そうじゃなくて ・・・つまり気づき始めたのよ」
中「・・・ああ」
馨「珍しく察しがいいわね」
中「おまえが彼女の歌を少しも尊敬してないってことだろ エリカが気づいたのは」
馨「・・・そうよあたしは高橋と一緒よ嘘は・・・どうしてもつけないの」
中「・・・エリカは傷つくさ」
馨「あたし仕事はどんな人間のクズとでも人殺しとでもできるわいい仕事さえしてくれればね でも恋彼女としかできない」
中「それがどれだけエリカを傷つけるのかわからない訳じゃないだろうに」
馨「・・・それでもあなたの歌が美しいと嘘をつくことができないの・・・」
中「・・・この歌は渡さない方がいい」
馨「どうして」
中「余計に傷つけるだろう」
馨「私の精一杯の愛よ・・・っ」
中「精一杯だとわかるから辛い」
馨「どうして・・・理解してくれないのかしら 私には二つの愛があって一方で彼女を愛し一方で音楽を愛してる どうしてその二つが同じでなくてはならないの」
中「いっそ・・・全く違う仕事の人間にしたらどうだ 才能のある人間に才能がないと言われながら一緒にいるのはエリカが辛い」
馨「言ってないわそんなこと」
中「一緒にいればわかる」
馨「・・・歌手だから彼女を愛したわけじゃないわ でもそうね いっそ病院の看護婦や学校の教師でいてくれたら」
中「・・・耐えられないのは彼女の弱さだ 誰だって自分が最高だって信じて生きる訳じゃない 思い知る機会が与えられれば逃げ出したくなる」
馨「そしてあんたは逃げ出したって訳ね」
[・・・]
馨「エリカのこともあたしは決して見放さないわ」

では次。

同じく菅野彰原作の毎日晴天シリーズ。帯刀家のアレです。

チルドレンズ・タイム (キャラコミックス)

チルドレンズ・タイム (キャラコミックス)

これも原作は小説なのですが、上の作品同様、私は毎日晴天はほとんど漫画でしか読んでませんので、こちらから引用。
帯刀家の末弟・真弓(受け)。そして帯刀家に転がり込んできた阿蘇芳秀の息子・勇太(受け)。二人は付き合ってます。その二人がけんかをしているストーリー。

本作では、真弓が幼稚園児の頃から付き合って、そして小学校に上がってからほどなく別れた相手である御幸がレズビアンとして登場。
御幸は昔はガキ大将で、最近じゃえらい立派な山車の引き手らしいです。でも優等生。で、もちろん幼馴染の真弓らと同様高校生で、剣道をやってます。かなりの成績らしいっす。あと、面食いでモテるらしい。
真弓は幼稚園まで女の子として扱われることが非常に多かったのです。真弓と御幸は将来結婚の約束をしていましたが、御幸が、実は真弓は男である事を知り、やむなく別れたのです。
昔の会話。

御幸「真弓なんで最近スカートはかないのさ スカートのほうがかわいいのに」
[・・・]
真弓「男の子なんだから学校にはズボンで行きなさいって大河兄が ほらランドセルも紺色だし」

紺色なのは、長女志麻姉が本当は赤にしたかったけど、長男大河の説得により紺色に妥協したため、紺色。
で、今回勇太と真弓は喧嘩をします。そのとき真弓が

真弓「今は俺でよくても後から絶対女の子の方がよくなるもん 言われたもん やっぱり女の子の方がいいって!」

と言ったのをきっかけに、勇太は「女の子の方がいい」と言った張本人の御幸に(友達・魚達と共に)会いに行きます。件の御幸が女だと知らずに・・・。

御幸「達也 誰だよそいつ」
[・・・]
 俺よりデカイな・・・ 女とケンカなんぞ不本意極まりないけどすんなり勝てるとも思えんし
勇太「昔おまえが捨てた真弓の今の男や」
御幸「! 真弓の・・・?」
勇太「ああ 女やないからっておまえに捨てられたんが傷になっとんかわからんけど今俺が迷惑しとるとこや ヒステリー起こされて破局寸前やで」
けど女となると殴るわけにも・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
勇太「? ?」
“御幸”が女なんやったらめでたく結婚の約束でもなんでもしたらよかったんとちゃうんけ・・・
御幸「真弓には悪かったと思ってるよ だけどサギだろ!?あれで男なんてよ かわいいしイイ子だし ちょっとわがままなところも小悪魔にょろよなところもメチャメチャ好みで 散々悩んだんだからこっちだって だけど男だってだけでどーっしても駄目なんだ しょうがないだろっ 生理的なもんなんだから」
勇太「―おまえ・・・」
魚達「はい こちら生まれついての本物のレズの方です」
御幸「あんたホモなんだろ真弓と付き合ってんだったら なに驚いたようなツラしてんだよ」
そらそうや
勇太「・・・けどそないな理由で真弓を捨てたんか」
御幸「・・・・・・そないなって言うけど あんたは真弓が実は女だったらどうすんのさ」
勇太「俺はガマンするで あいつやったら」
魚達「なんつう間違った会話だ・・・」
勇太「気持ちに惚れたんや関係あるか」
御幸「くっくっ ・・・じゃあそう言って安心させてやんなよ 大体今さらんな十年も前の話なんか関係あるかっつうの 真弓が今なんか不安になったんならそりゃ間違いなくあんたのせいだろ」

では次。

SEX PISTOLS 4 (ビーボーイコミックス)

SEX PISTOLS 4 (ビーボーイコミックス)

前も紹介したのであらすじは省略。ただ、同性間でも子を作れるという設定だったことを思い出してね。セクピことSEX PISTOLSの巻尾とカレンが本作のレズビアン(かどうかはすごく微妙だけどー)。
巻尾はね、(主人公・ノリ夫のカレシである)国政の母親なのね。巻尾は他にもマクシミリアンとの間の子、米国の母親でもあります。それとカレンとの間の子、愛美と志信のパパです。(多いなぁ) 
というのは、愛美と志信はカレンとゲイ・カップル(女同士)の関係で作った子なのです。産んだのはカレンなのでママはカレンということらしいのです。
巻尾はかなりの悪役で、お家のためならなんでもやっちゃう怖い人です。職業は売春斡旋です。表向きはブリーリングセッティングコンサルタント会社会長。で、エーゲ海で女体盛をしてタイーホされちゃったりするらしいのです。(でも実はそれは、巻尾が裏で自分の企みを果たすためのデマだったかもしれませんが)
デイビットとマクシミリアンの子、英国(なんか複雑!)は彼女の事をこう言います。

「彼女は斑類の典型的上流階級の歪みを寄せ集めたような人間だ 子孫繁栄の為なら心は必要ない 「お家」至上主義 考え方が根本的に違うんだよ ―――・・・でもそんな彼女が「家」を捨てた 女将と「かけおち」した 本家が女将を格下に見て蔑ろにしたから 」

女将はカレンのことね。
巻尾は、自分の父の妾であったカレンとかけおちをしたのです。親族の間では、実の娘が実の父親の妾を寝取った!ということで噂されちゃったりしてます。

それでね、今回巻尾は国政を軟禁して、自分の仕事とお家(斑目家)のため、彼に売春行為を強要させようとします。それを食い止めにみんな(主にノリ夫)が巻尾のもとに乗り込む。そしてなんとか助け出せたそのシーンで、巻尾が米国に「いい気になるな」と言ってところに、突如カレンが現れます。

巻尾「お前等いい気になるなよ これだけして無事でいられると思ったら・・・―」
カレン「どうだってんだい!? 話はあらいざらい志信に吐かせたよ!!」
巻「か・・・か か か か カレンちゃ・・・ッ」
カ「ろくすっぽ家に寄り付かずにエーゲ海でイタリア女をはべらせて浮気三昧 フラフラしてると思ったら裏でウチの子を斑目なんぞに売ろうとしたって? 覚悟しなッ!!」

そして巻尾たこ殴りの刑。カレンちゃんには弱い!
で、結局国政は、ノリ夫の(先祖がえりの)力とみんなの協力でなんとか助け出されるわけだけど、そこでボコボコにされた巻尾が息子の愛美に泣き付くところからのシーン。

愛美「パパ大丈夫・・・!?」
巻尾「マナちゃ〜〜ん パパあのチビ猫に負けちゃったヨー!!」
カレン「根性あるじゃないかッ!アタシは気に入ったよ!!マキオにケンカ売るなんて」
米国「ノリリンて昔の女将にちょっと似てるもんなぁ」
巻尾「ゲー 全然似てないヨ カレンちゃんはもっと美人だったもん 国政の奴!逆らいやがった 「他の男のモノになるのが耐えられない」とか言っちゃってさぁ〜〜」
カレン「国政は昔のアンタにそっくりじゃないか 自業自得だよ!」

他の雄のモノになるのが耐えられない

パパは巻尾のことね。ノリリンはノリ夫の愛称。
巻尾は、かつて駆け落ちした際にカレンの腕を引っ張りながら、(自分の子である国政と同様に)こんなふうに独占欲を見せる人でした。

では次。

暴れる犬 (あすかコミックCLーDX)

暴れる犬 (あすかコミックCLーDX)

これはねーレズビアンたちはちょっとだけの登場シーンしかないです。一コマだけ。
えーとね、本作の番外編「迷える狼」の登場人物・洋一の元妻がその人です。名前は出てこない。
洋一は友達結婚?かなにかで、結婚をしています。その相手が今回のレズビアンなんだけど、彼女には好きな人がいるみたい。
で、洋一はゲイなのね。自由に男と付き合いたいからレズビアン(もしくは女同士で付き合ってる女性)と結婚して、お互いうまく生活したかったみたいです。つまり、ゲイとビアンのカモフラージュ婚ですな。

「洋ちゃん 今まで有り難うね〜」
 「好きな人についていく」と奥さんは旅立って行った
 俺バツイチ決定
「急だな―おい」
 お互いの都合で籍だけ入れてたようなもんだったから幸せになってくれとしか思わなかったけど

コレまでとはちょっと違う印象です。つーか、二人ともかわいい!!今までのキャラはちょっと恐そうだったけどー。
一コマしかいないけど、どちらも萌え〜でキュートな女性です!ちょっとフェミニンな感じかな?しかも彼女の「好きな人」はメガネっ子w

では次。はぁはぁ。息が切れてきた。

本作では表題作の番外編「誰も知らない」レズビアンが登場。攻めの友人としてレズビアンが出てきます。名前なし。
誰も知らないの主人公たち、攻めの賢三(教師)と、受けの耀治(生徒)が会話してるシーン。受けが攻めの机の上にある女性との写真を見つけ、それについて質問します。

「先生この人誰?」
「ああその人は友人というか・・・」
「・・・もしかして恋人?」
「・・・・・・・・・・・・・いつか結婚しようかなんて話はしてますけど・・・」

そして、その彼女と攻めが会話してるシーン。

「暗い顔ね お通夜みたいよ」
「うるせーよ」
「あーいやだ男のヒステリー あんたが飲みたいって言うから付き合ってやってんのに」
「・・・やっぱり俺に高校教師なんて向いてねーんだな」
「はあ?楽ちんでいいってなったくせに しかも趣味丸出しで男子校なんか選んでさ」
「だからうるせーんだよこのレズ!!」
「いい加減にしないとキンタマ蹴りつぶすよこのくされホモ 甘えさせてほしいならわけくらいお話し」
「・・・・・・ ・・・俺は面倒は嫌いなんだ 今の仕事は気に入ってるし俺の人生に波風を立てるのが嫌だ 自主退学を止めたのも俺のクラスから退学者を出したくなかっただけであの子の人生を真剣に考えたわけじゃない ・・・なのにあの子はあんな目で見る」
「・・・話がよく見えないんだけどあんたその子に惚れてんの」
「いや・・・言っただろ俺は面倒は嫌いなんだ 今日はっきり突き放したよ」
[・・・]
「・・・ふーん それでどうしてそんなにしょっぱい顔してんのよ」
「・・・・・・・・・・・・・なあそろそろ俺と結婚しないか お互い恋愛関係は干渉せず自由にして家では仲良く友情を深めあう きっと楽しいぜ カモフラージュ婚v」
「ドばか」
「・・・キツイ女だな なんでこんなの呼んだんだ俺」
「バカにはね」

攻めはこの友人の彼女と結婚しようとしてましたが、ふられちゃってます。

で、今回受けが悪友にかどわかされ危機に陥ってるのね。そのとき、攻めは受けを助けに行くのです。
攻めは助け出してその場から受けを連れ出します。悪友さんは二人を追いかけるんだけど、そこに居合わせたその彼女は、追っ手の足を引っ掛けて転ばせて、彼等をフォローします。

「・・・ったく世話のやける男だね 自分の本心もわかんないなんて」

そんな感じの彼女はちょっとタトゥーの短髪の方の人に似てたり・・・。


とまぁ、そういうわけで、BLの中のレズビアンでした。皆さんいかがでしたか?そうですか、よくわかりませんでしたか。そりゃこんな紹介の内容じゃよくわからないよねーあはははは。はぁ・・・。
他にも幾らかあるかもしれませんが、私の思いつくところじゃこんな感じ。また見つけたら「コレに出てるよー」とか報告するかも。

共通項はサバサバしてて(「迷える狼」はちょっとわからない)、格好良くて、ストーリーのうまい補助をする、ていう役割を与えられてるところでしょうか。そもそもBLの中では女性はそういう「補助」として機能するのが多いので、本来的なものかと。
皆さんはどういう印象をもたれたでしょうか?

とりあえず、キャラクタ性だけでも掴めたでしょうか。レズビアンアイデンティティーを持った人から見れば、どのように映ることでしょうか。(と言っても、そんなもん個々人の感性に拠るから意見は様々だろうケドね)
BL作家の中では「ホモもレズも同じ」と言う人も居るけれど、ゲイとレズビアンは何か描かれ方が根本的に違うのかどうか・・・ちょっと私には判断つきませんでした。