新婚さん、いらっさ〜い!

有栖川家の花嫁 (アイノベルズ)

有栖川家の花嫁 (アイノベルズ)

倒産しちゃってる会社なので、お探しの場合古本屋あたりでだうぞ。

あらすじ。

華族の流れを汲む名門・有栖川家当主・誉との結婚が決まっていた姉が出奔した。焦った父に騙された水晶は何も知らないまま、その身代わりとして誉に嫁がされてしまう。若く美しい―けれど「妻は道具」と言い切る尊大な誉に抗う術もなく、水晶は心と体を踏みにじられた。そしてその日から水晶は有栖川家の因習に従い、昼は貞淑で慎ましやかに、夜は従順で淫らに、誉の妻として暮らすことになり・・・。

帯。

誓いの言葉は、永遠の服従と屈辱

まぁあ、げに恐ろしいこと。
水晶は「あきら」と読む。誉はまんま「ほまれ」。(マンマホマレて素敵な響き。

BLレビュー。

いやぁ、もう内容に詳しく触れたくないほど女性蔑視やらの酷い因習でして。そんな因習に従わされ攻めに手ひどく扱われる受けさんは可哀想ですねー。うわー。
しかしたいていのBLでは、こういう攻めの豪邸に住まわされた受けは、わりと最後の方には自立して行って攻めと対等になって行くものなのに、本作の受けはあくまで尽くす女として攻めの可愛いお嫁さんです。あと、女装モノ。そこらへんが嫌な人にはパス推奨。

で、本作の受けは理不尽極まりない設定の中、よくわからないポジシンで苦境に立ち向かうわけですが、「あなたの心に入りたい」と言い出だす受けの事を、攻めは「俺にまったく理解できない」と言います。ええ、私もまったくこの受けが理解できません。
そもそも受けがなんでその状況を受け入れたかと言うと、「お前は逃げ出した姉を捕まえるまでのつなぎだ。けれどここでお前が抵抗したら、姉を捕まえた際に手ひどく扱うかもしれないぞ?」と脅されてるからなわけで。でも、受け的に言えば「人を道具のように扱うなんてダメ!愛は素晴らしい!がんばって誉さんに一人の人間として見てもらうぞ!」というのがその理由になってるらしいのね。・・・ね?よくわからないでしょ、この受け。
しかもねー、一部の女中達はこの奇妙な状況を事前に説明されており、この家の「習わしを守るための強引なやり口にはとっくに慣れっこらしく」、受けに奉仕している・・・。

・・・
・・・
・・・え?あんたんとこの家、男嫁が来るのなんか日常茶飯事で、んなの取るに足らないことなわけ?
誉が黒いものでも白と言えば白なんですって。
お目出度い家。

以下ネタバレ。

 姉の新生活が幸福なものになるように力を尽くす。
 そして、すぐ傍で生活する人と険悪でいるより、不自然な関係が少しでも穏やかに過ごせるようにしたい。

と言って良き妻(プ)を務めようとがんばる受け・・・。
でもね、水晶。あんたは最後の方では「お姉ちゃん、あなたが結婚するはずだった誉さんと結ばれてごめんよ」みたいなことまで言ってるけど、そもそもこの家の因習がおかしいわけでさ。家の繁栄のため政略結婚させて逃げ出したら追って無理やり。それが出来ないなら弟で代用。そんな人権無視な制度を持つ家に倣って一応の「幸せ」を掴めるようにしたほうがいいと言ってしまうのは、逆を言えばそこにあるあらゆる不幸を、「幸せ」という薄っぺらい言葉で隠蔽してしまうことなんだよ。
まず、本当に幸せを思うのなら、「いけないものはいけない」という当たり前すぎる前提を忘れないでいなさいってーの。あんたの言ってることは結局不当な暴力への従属だよーん。

で、ストーリーは、健気で頑張り屋さんの受けによって家のものや、ついには攻めも心を開くってストーリーでした。最終的にアマアマカップルになっていった模様。

nodada's eye

しかし面白い。この受けは本当に最後まで花嫁であり、「僕は誉さんの妻・・・」で収まろうとしている・・・。(奥さん、ここに男嫁が奨励されてますよー)
受けは「こんな女物の着物はもちろん嫌だ」とか言って、自分は男だー!と言っているのに、なのに!自分は嫁であり妻であると言って憚らない。

 「・・・・・・何がおかしいんですか」
 「いや失敬。この家の女性は、奥方にご側室、女中も、一切誰もが人形のように大人しく、弾性の意見に逆らうことがありませんでした。気丈な女性がどうにも珍しいんです」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 自分は女ではない、という反論は最早虚しいものだった。

と、自分がその家の中では女である事を半ば認めている。けれど、女装は当然嫌なんだそうだ。男だから、高価な女物は着ても楽しくない、と。けど、「新婚夫婦として仲睦まじく出来たら」と言う。不思議な空間ですねー。

受けは框に三つ指ついていってらっしゃいませといって、夜は褥で夫である男様に愛の奉仕。(まあ!「美しい国」作りに貢献してます!男嫁だけど!

 「結婚するっていうのは、そういうことだと思います。普通の結婚と違うから尚更、そうやって、二人で少しずつ心を通じ合わせていくことが必要だと思います」

と仰います。男嫁が。

 誉は床の間の花など、興味がないだけで、決して嫌ってるわけではない。形や色は質素でもいい。甘い匂いの花を飾っておけば、何かの折に、水晶の気遣いに必ず気付いてくれる。
 そういった心遣いが、新妻には必要なのだ。

とのたまいます。男嫁が。


あー、もうなんだったんでしょうねー、良き結婚とか良き妻とか。もはやこの空間ではそれらが間接脱臼しちゃってて、意味なんかありゃしません。「・・・えーと、結婚のあるべき姿って、なんだっけ?」てなもんです。
アベちんとかが読んだら泣いて喜ぶんじゃないか、このBLの男嫁