萌をわかってらっしゃらない・・・?

今月のBBCはちょっと質悪かったわ・・・。(ちなみに、BBC(ビーボーイコミックス)のキーワード作成しました。)

キミとボクの温度差 (ビーボーイコミックス)

キミとボクの温度差 (ビーボーイコミックス)

あらすじ。

誘ってきたのは同じクラスの菅野だった。好奇心だけのキスと触りっこで知ったのは、いつもすましてる菅野がHを望んでるってこと。
ある日彼の家を訪れた加倉井は、熱に浮かされた色っぽい菅野の姿を見て…!?
揺れる性春v大量描き下ろし90Pあり!!

BLレビュー。

えーと、この方BL暦浅いらしく「BL初心者」だということです。なるほど、BLの深みに嵌ってない人が描くとこうなるのか、とつい思ってしまいました。
まあそれでも、楽しめる人はいるはずだし、それなりに萌えを見出す人もいるでしょう。読み手が全て同じ思考を持ってるわけじゃないのだから当たり前。けれど、この作品には、私がこれまで感じてきたBLらしさというものが、薄い、あるいはどこか欠如してるのではないかと思わせる感触がありました。まあ、単に感触なんですけど。

そして、キャラクタが何を考えてるのかどんなメンタリティなのか、もはや人格の統一感がわからずあべこべに感じられて、そこらへんも読んでてきつかったです。
で、話の内容で気になるのが、やっぱり同性愛の表現でした。キャラクタが何を考えてるのかわからないのは、同性愛(というよりか性道徳・性認識)についてキャラクタが何を思ってるのかわからないから、という点もあったと思う。それは思うに、キャラクタの人格が自立して築かれてるのではなく、作者さんの性道徳・性認識(つまり作者自身の視点)が、キャラクタの内面に中途半端に入り込んだから、ということなのだと感じました。
作家はキャラクタから距離を取らなければならないと思いますが、それは案外難しいのでしょうね。


以下ネタバレ。

まず萌えについて。
えーとですね、私はBLの基本的な萌えとは、やはり攻めと受けの絆だと思っています。そしてそれは、二人の恋愛が“なにによって”支えられ育まれてあるのか、の追求が味噌になってるのだと思うのです。
なのですが、この攻めなんか見ると、受けに対して一体どんな情があるのかよく見えないんです。
最初攻めは消極的に受けと付き合ってるんですね。けれど、中盤に入るとやっと「好きだ」と告白します。
でも、何で「好き」なのか、という点がしっかり読み手に伝わったかというと、私はそう感じませんでした。(私は人の感情というものにすごく疑ぐり深いのでその所為かも知れませんが)

たとえば最初の段階では、攻めは受けとの付き合いに関してこういいます。

スガノの事 好きかどうかわかんねえっての
本当の所 今も よくわかんねえ
でも スガノとHするのは嫌じゃないな
「大丈夫か?スガノ」
つーか また したいってゆーか
「熱あるのにムチャしてゴメン」
「大丈夫だよ 加倉井が止まらなくなるとは 思わなかったけど」
こーゆー気持ち 恋っていうんだろうか?

コレなんか読むと、単にヘテロのモノセクシュアルだった人が、バイセクシュアルな欲望に目覚めて相手に興味が沸き「これは恋?」と言ってるようにしか見えません。
それならそれでいいんですよ。それを恋と呼ぶなら恋なのでしょう。最初は出来ないと思っていた対象とセックスが出来て、相手に興味が沸いた・・ということを担保にした絆というのも、魅力ある絆の一つ。私にはそういうのも面白かったりします。
でも、 単にバイセクシュアルな欲望に目覚めて同性間セックスの味を覚えたから相手に情が沸く、という話では、受けのことをどう思ってるのかが、・・・正直具体的によくわからない。
“なんで”受けを好きなのか、という重要なポイントが不明瞭なままでは、BLらしい萌えではないような気が、私自身はします。皆様はどうでしょうか?? まあ、この点は絆というものをどのように解釈するか、が重要な話ですので、それについて個人が価値判断を下しても詮無きことのように思えます。深く考えるのはやめましょう。これで萌える人もいるし、萌えない人もいる、ということなだけでしょうね。

あと、ついでに言うと、この作品に読むべき絆が「親に関係がばれて反対されても付き合い続ける二人の絆は深いんだ」というものだとしたなら、正直陳腐で辟易。ウンザリダヨ!「だからなんで二人はそんなに好き合ってるんだよ」と疑問。二人にしかわからない愛を読まされてもちょっと当惑します。読み手にもわかるように愛を見せ付けてくれなきゃね、と思います。


同性愛について。

受けが他の男に言い寄られて、しきりに「俺は男だよ」と言い訳して拒むのもウンザリ。
間男さんに言い寄られてるシーン。

「好きです 菅野くんの事が」
「僕男だけど?」
どうしよう
「加倉井くんとはキスしてましたよね」
(うわっ 見られてたのか汗)
「加倉井くんでないとダメなんですか?」
(肯定したら付き合ってるって事になるじゃないか)「いや・・・だから僕も男だし汗」

なんで男と付き合ってる人がこんな矛盾した言い訳で相手を言いくるめられると本気で思ってるのかが不明。 (汗)ってなんだよ?

で、攻めがまたわからない。親にセックスしてるところ見られた後も「続きしていい?」と平然と受けに聞いてくる神経が信じられない。(まあ、私としてはそういうキャラクタもありですけどもー)
バレても反対されるとは露ほども考えなかったようにさえ見える攻め(受けも?)。親御さんにもいろんな方がいるので、バレても問題が起こらないこともあると私は思っていますが、それにしたってこの能天気っぷりは何?

(受け)「僕が男だから」
(攻め)「ん・・・なんで男同士でってずっと言ってた 常識人だからなぁうちの親 つかHはいいのかよ?」
(受け)「そう」
恋愛なんて当人同士のことだから 周囲の人がどうとかって考えもしなかった 不快に思う人もいるんだな

攻めに限らないですね、二人ともいくらなんでもこの現実感覚のなさはありえないだろうと突っ込みたい。そりゃあ、不快に思わない人もいるし、同性で付き合ってるからって反対される本来的な理由も別にないと私は思う。けれど、もしかして日本に同性愛差別がないとでも思ってるのかこの二人・・・。大したオネンネだ。

それでも「別れるなんてちっとも考えてない」攻めの性格。・・・正直ですね、当惑します。差別に関する認識が乏しく、そしてリベラルな感性の持ち主。・・・あなたにとって同性愛差別(差別というのが強すぎるなら、不当な抑圧と言ってもいい)は他人事だったんですか?と。
私にはこれが、彼に威風堂々としたリベラル派の意思があるんだ、という風には見えず、単にこの風当たりの強さがどういうものなのかさっぱり認識していないオネンネな人の能天気振り、にしか見えないのですorz

で、最終的には親も、受けに「彼と付き合えて良かった点がこんなにあるんですー」と言われたりしたことや「スガノ! 俺をそんなに想ってくれて嬉しいよ」という攻めからの抱擁を見せ付けられたりして、“しかたなく容認してあげる”のです。
なんだか、転校させられそうだったのも、見張りを付けられてまで反対されたのも、「結局この程度で済むことだったのね」、という印象を感じて拍子抜け。
まあ一応形だけは解決して大変よかったとは思いますけど、何なの?あなた方のその中途半端な認識と言動は。・・・とか思います。
いや、そりゃあそういうケースもあるかもしれませんが、でもそれにしたって結局この騒動って一体なんだったのよ?・・・と当惑。

うーん、リベラルなんだか保守的(?)なんだか、深刻なんだか軽薄なんだか、私にはもはやよくわかりません。

メモ。

攻めの親戚の一言。

「有り得ねぇ 男とHってお前どんだけサカッてんだよ」

男とセックスしたがったらサカッてる、か。そんなの当たり前でしょ。誰としたがっててもサカッてるのに変わりはないんだし。

「何?勇ヤル方?ヤラれる方?」
[・・・]
「うわっ 勇のカレシって菅野なの?」
[・・・]
「菅野かぁ ナルホドね 男でも菅野なら有りかもな」

うわぁ、立派にセクハラなさってますね・・・。すごぉい。いや、まあこの程度日常茶飯事な表現だし別にいいんだけど。。。いいんだけども。