変態万歳!!

至高の変態漫画を描いてくれた京山あつきさんに心からありがとう!

キスミーテニスボーイ (キャラコミックス)

キスミーテニスボーイ (キャラコミックス)

あらすじ。

テニス留学中の寺門要(じもんかなめ)に
ケンカを売ってきた金髪の美少年ダニエル。
数年後──再会した彼は
全米ジュニアチャンピオンになっていた。
「仲直りしよう」と余裕の笑みで
手を差し出すダニエルに、
要はいきなり公衆の面前でキス!?
その瞬間から、男のプライドと貞操をかけた
ふたりの動機不純な戦いがはじまった…!! 

話の詳しい要素はトラバ先でどうぞ。
la aqua vita KISS ME テニスボーイ
眩しい君に恋をした | 水中雑草園
『KISS ME テニスボーイ』/京山あつき | ゲイ&腐男子のBL読書ブログ

BLレビュー。

興奮でいつも通り分かりやすく書けないけどごめんー。

えーと。もうね、とにもかくにも最初から最後までカナメ(攻め)がマジに変態なんです。奇妙なテンポ、思考回路と言動がもはや意味不明、明らかに変人指定されるような人w
そんなカナメに振り回されざるをえない運命の子、ダニエル・・・。彼は一応「ノーマル」な人だった。なのだけど、彼はカナメに振り回されることでその変態性を暴露されちゃいます。

で、思うんだけど、彼らってつまりは“ボケ”と“突っ込み”の関係で繋がったお笑いコンビなんだと思う。ほら、突っ込み役の人って一応「普通」な立ち位置っポク思えるでしょ?けれど、皆様もご存知のとおり、ボケと上手く呼吸のあった漫才をしてる(してしまえる)突込み役という人は、じつはボケ役と同じ奇天烈な変人なのですよね。そういう関係性が、実は二人の間にはある 、と思いました。

そしてこの作品の特徴は、奇妙な恋愛駆け引き(ルール)と それによるマニアックプレイで引き起こされる物語性。
・・・

  • 「テニスの試合に勝てたら○○できる」<性愛の複雑さ

これが面白い摩訶不思議な恋愛風景を生み出す。

  • 周囲を巻き込んだ、同性愛嫌悪を笑うコメディ。<「ノーマル」にこだわらない「変態」のモード

ダニエルが周囲に「ホモ!」と揶揄されても見事に切り返せたのも、この笑いのモードゆえか?
・・・

このアホ過ぎるマニアックな焦らしプレイ+半公開プレイの攻防戦はもう必見!テニスコートが変態の嵐!そして私たち読者は、ーーー野球拳を傍観するオヤジよろしくーーー彼らの試合の行方が気になって気になって仕方がなくなるのです!こんなにまでお預け食わされて身体の一部分しか触れないHがエロイものだなんて・・・っ!!工夫エロ好き!

ダニエルがファンに対して「ゲイじゃないからね・・・」と言ってるシーンもなんか虚しい!もうそういうのがどうでもよくなる破壊力のあるコメディだなと、私には感じられました。
受けのダニエルは、スマートなプレイヤーになり損ねた誘いうけv で、(作者さんいわく)カナメは「頭弱い子じゃなくてスポーツ天然」攻め。萌える!
 
ご馳走様です!


以下ネタバレ多。


ところで、カナメの魅力は、そのあからさま過ぎて大変キモい性的な視線にあると思う。
テニスプレイ真っ最中にダニエルの腹チラやら腰つきをジロジロと見つめて盛っている、油断ならないキャラクタ性。(あと、彼がこどもみたいに泣きじゃくるシーンも必見だ)
カナメの変態性を指摘しようと思ったら、どこもかしこも変態で困ります。カナメの奇妙で愛らしいパフォーマンス!世間の常識なんて何も知らないかのようなカナメのパラレルワールド全開の展開に巻き込まれます!

そんなおかしなカナメに、しかしなぜか釘付けになり心奪われるダニエル・・・。なんだか〜、とってぇも 変だ!!(ヘンダーランドのテーマ byクレヨンしんちゃん

しかしカナメもBLの攻めらしく神出鬼没キャラです。・・・なのだけど、その出没の仕方がなんだかおかしい。。。唐突過ぎて予測不能な行動パターン!(カナメの行動に「日本ではあれがフツーなのかな?・・・日本人だっけ?中国人?」と困惑するダニエルも、なんだか奇妙にズレている!)
ダニエルのハートはかつてない動揺と危機を感じる。このままではこっちがダメになる・・・。だから彼はカナメに言うのです。「試合で俺に負けたらもうキスをするな!」と。
しかし、後にその取引が彼の命取りとなります・・・。ダニエルは強い選手なので彼と戦ってもなかなか負けない・・・。けれど、一度負ければ・・・。ムフフ・・・www

カナメは一度負けても次のチャンスをあきらめてはいなかった・・・。(<そんなルールだったっけ?)
で、カナメがダニエルに勝ったらば、次には公衆の面前であ〜んなことをした上に,更に恐ろしいことを言う・・・v

「次は 乳首を舐めさせてくれ」

ここに「勝ったらダニエルに○○をできるようになる」という新たな取引(ルール)が生まれてしまったのです。ダニエル危うし!さあ、紳士のスポーツであるテニスと、彼らの身体と恋の行方はどうなるのか!?

nodada's eye.

でね、このルール(←勝ったら相手に何かを要求できる仕組みです)とそれにより引き起こされるパニックが非常に面白かったのよ。
彼らの恋愛の育みは、あくまでこのルールに則った上で行われるのね。ダニエルのカナメに対する気持ちの変化も、試合の行方に左右されるし、その緊張関係が何よりお互いの近接(絆!)に重要なものなんだ。

ダニエル「次にオレが勝ったらキスはやめてもらう 二度とするなよ いいな!」
カナメ「よし オレが勝ったら乳首だ」
ダニエル「 (・・・・・・・・・・・・・・・・・・落ち着け・・・ こいつとまともに話し合っても・・・・・・・・・・・・負ける テニスで勝つんだ 勝てばいいんだから) まさか コートではするなよ まあ勝つけど」
カナメ「コートがいい!」
ガーン・・・
カナメ「コートのダニエルが一番いい」
もしオレが― カナメを好きでも・・・・・・
カナメ「じゃあ試合でな」
負けられないじゃないか・・・・・・ ぜったいに・・・
ダニエル(おそろしい・・・ ・・・・・・・・・うっかりトキメいた自分もおそろしい)

そんな強引なカナメですが、だからって勝ってもいないのに新たな行為を要求することは一切なく、むしろ、かたくななまでにルールを遵守しようとするのですね。
二人は結局、「乳首までは許した仲」になる。ところが、ダニエルがもどかしさのあまりカナメに体のすべてを許そうとしても(襲い)、カナメはなぜかそれを良しとしないのね。

ダニエル「なんで「勝ってから」がいいわけ? 勝ってからがいいんだろ?」
カナメ「うん うん! 勝ってからがいい!」
ダニエル「(なにそのテンション)あーそー なんで? ・・・なぁ・・・ なんでそんなに勝ちにこだわるんだ?」
カナメ「・・・・・・・・・」
ダニエル「メンツとかそういうの?」
カナメ「・・・・・・分からん 自分でも分からん!」
ダニエル「分からんって・・・」
カナメ「分からん!でも勝ってからがいい!」

カナメ「オレはコートのダニエルが一番好きだ でも今のダニエルはキラキラしてない」

なぜかは分からないけれど、カナメは ダニエルに/テニスコートで/勝った上で/ という条件でHをしなければちんぽがうまく起たないのね。そういうオリジナリティ溢れる欲望のあり方(性愛)が読めて楽しかったです。

最後、彼らはその条件でないといけない理由に気づくのですよ。「なんで」か分かったのね。そして二人は「ステキ」で「サイコー」な自分たちのパートナーシップを見つけ出すのです・・・っ!(でも、彼ららしい落ちがついてますよw)

で、これなんですけど、私には彼らの恋愛方程式が既存のセクシュアリティ概念を逸脱した性的欲望に思えてならなかったんですよ。なんていうか、大げさに言ってしまえば、新たな欲望形態として私の目に映ったんですね。私たちってどうしても自分の性的欲望を既存の名前の中からしか捉えないじゃないですか?同性を愛したら同性愛。異性を愛したら異性愛。3人以上の複数と恋愛したらポリガミー(ポリアモリー?)。男性女性どちらとも愛したらバイセクシュアル。小児を愛したら小児性愛。・・・etc
でもでも、良く考えてみると、私たちの性的欲望ってこれらの名前だけでは説明のつかないものですよね。
ほら、私たちがBL読んでてなぜか天然受けじゃないといけないとかなぜか誘い受けじゃないといけないとか思うのと、同じだと思うんですよ。たとえば、異性や同性を愛したからって その人の性愛は単に同性愛異性愛という属性だけがあるのではなく、「天然男/女」「誘い魔」という属性も含めてその人の性愛の形があるわけでしょ?でも、そういう性的欲望には、なぜか名前がない。
これって結局カナメと同じだと思うのですよ。カナメにはダニエルに/テニスコートで/勝った上で/でないといけない理由(なのかな?あれは。)があるわけだけど、理由があるかどうかはともかくとして、こういう性愛の形もあるわけですよね。私たちも同じで、単に同性異性じゃないといけないとかだけでなく、相手の美醜が大切だったり、年齢階級等々の要素が重要だったりしますよね。そういう複雑な性愛の形をしているのだけれど、なぜかそれはあまり重要視されず、単に同性愛異性愛とかに分類される。でも、それだけじゃなくて、カナメ同様私たちにも、なぜかは分からないけれど「こうじゃないとやだ!」ていう好みがあるんですよねー・・・。
で、このカナメというキャラクターは、そういう名前のない欲望のあり方を実践して見せており、性愛の複雑さ・変態性をまざまざと示しているんだ・・・。そんな風に私には感じられました。


ああ、なんて楽しい変態性欲・・・・・っ。理由なんてもうどうでも良いんだけど、とにかく二人ならではの絆が読み取れたのでそれだけで大満足ですよ。もう感動です!



他にもたくさん見所はありますが、もう長くなったのでここらへんまでにしておきます。いつもながら私の拙い解釈を読んでくださってありがとうございます。それでは。