「ハツアイ」。天然受けによる発見。

けっこう楽しかったー。
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ハツアイ (GUSH COMICS)

ハツアイ (GUSH COMICS)

amazon・・・。
あらすじ。

・・・なぜかクラスメイト・日比野の、喉仏が気になる!!高校生の柏谷は、自分の衝動の理由がわからず迷走(クルクル)する毎日。ひょんなことから、ソコが気になるのは自分が吸血鬼だから!!!?と推測して、とある放課後、さっそく日比野を押し倒してみた。喉仏を舐めたはいいけど、この衝動は止まらない。それは・・・どうして?
ちょっと不思議な高校生・柏谷と、それを見守る日比野の青春ラブ♥

帯。

ここまで電波だと、むしろ小悪魔だろっ。
吸血鬼から北○の拳に猫耳、カッパ?
不思議高校生・柏谷の小悪魔攻撃6連発に、見守る同級生の日比野はいつまでも腰くだけ♥

帯を見てもらったらわかるけれど、可愛らしいボケ子と言うよりはデムパです。

BLレビュー。

今回は最初からネタバレ気味なので、もう折りません。
ファンの方には残念ですけれど、別に吸血鬼ものではありません。(て、そんなジャンルあるのか?)
これはですね、「こんな風に日比野(喉仏)のことが気になるのは、きっと自分が吸血鬼だからだ。」と思うことにより、なかなか自分の恋を「自覚」できない不思議ちゃんのお話なのです。とは言え、私は自我が“ソレ”を「恋」だと名づけない限りはどんな現象も恋とは呼べないと思ってるので、こう説明するのは不本意なのですけれどw
柏谷は非一般的思考回路の奇人キャラであり、であるからこそ、「フツー」の流れで恋愛に発展することのない“欲望の展開”を、微視的に見せ付ける役者なのです。これは恋愛というものの構築性を眺める機会を与えてくれる面白いキャラです。デムパや天然受けや奇人変人なキャラと言うのは、私たちが日ごろ当たり前(本質的)だと信じている物事の構築性(andそれほど本質的ではないと言う事実)を記述するのに適している存在だと私は思っています。ですが、今回はそういうパフォーマンスはあまり強くなかったですね。一話目ですでに「このような現象を世間一般では恋と呼ぶのだ」と早々に気づいてるのですから。
彼は結局それほどデムパでもなかったと思う所は、やっていることの本質は「喉仏フェチ」と大して変わらず、それを自分語で説明しているのが奇妙なだけ、というトコロです。でもそれが私的にツボでした。(あと、「お前見てるとむいむいしてくる」とか・・・w)
受けはですね、帯でもあるのですが、本人にしか分からない文脈でヘンテコリンな単語を急に出してきて、攻めを惑わすのです。ソレがもう楽しくて楽しくて、そして可愛らしくて!小ネタもちょっぴりおかしくて、そういうボケっぷりで話が進んじゃうものだから、「ああ、天然+不思議受けと恋をするとタダでは済まない感じで、楽じゃないなぁ。(笑)」などと思いました。
ところで、帯とあらすじにもあったように、このお話、どこか「受けを見守る攻めのお話」というニュアンスがあるように感じられます。攻めは受けよりも早く恋をしていてますが、彼は昔から受けのお守り役であり、「こんなデムパなやつを理解しているのは俺だけ」という優越感と独占欲を持っていたんです(萌え!)。そんな彼が突如受けからの奇妙なアプローチを受けて困惑しちゃうわけです。受けは、実のところそれほど理解不能な思考回路でもないので、「俺のこと好きなのか?」とか言われてもけっこう素直なリアクションをするんですよ。ですけれど、彼は恋愛のプロセスみたいなものをダウンロードしてないものだから、リアクション後の展開が屈折してしまい、攻めを振り回す結果になる。彼には彼の納得するプロセスがあるものですから、それがクリアされないとどこかで微妙に躓くわけです。この難解な思考回路(プロセス)の成り行きを見守らないと先には進めない攻めの不憫さが、今回の萌えツボでした♪

要するに、天然受けと恋愛するには、その天然にある程度付き合わなければならない、ということです。それはある意味、受けの迷走という通過点を見守らざるをえないということでもあるから、攻めは自動的に「子守役」になってしまうという帰結になるんですね。・・・たぶん。
この「見守る(見守らざるを得ないw)攻め」、という図が、私的にツボなわけです^^
私は基本的に「受けに振り回される攻め」という構図に萌えるので、この作品なかなか美味しく頂けましたよ!

Hもこんな受けですから、(それほど)短絡的に猫耳プレイになるわけでもなかったので、ちょっと面白く味わえましたー。・・・あと、あと、攻めが受けの遊び心のためにられていたのが・・・!
・・・というか、カバー裏の受けの脳内妄想が、なんだか気持ちの悪い話になってます・・・・!!「隊長」って何だよ!(笑)もう、あほだなー。

nodada's eye.

後半では攻めと受けが大学生になって同居するのです。そこで攻めは自分たちの関係を「いわゆる『禁断の関係』だ」と言うのです。この「禁断」というタームは、所詮形骸化されたネタとしての「禁断」なのかとも思いましたが、ちょっとそうじゃなかったみたい。

「禁断の関係」 その犯罪は二人そろわないと成立しない
〔・・・〕
「さっきの『禁断』の話さぁ 俺ちょっとドキッときた」
〔・・・〕
今更降りるなんて出来ない だってそうだろ 俺達は 共犯者だ

ということで、ここでは同性愛は禁断愛らしいです。今時ソレはないだろーと言うのが正直な感想ですが、こういう「禁断愛・・・ウットリ(はぁと)」みたいな読みを与える物語性は、同性愛に抑圧的な表現。同性愛であるだけで「犯罪的だ」と言っているわけですから、同性愛者からしたら「私たちは犯罪者か・・・!?」てなもんですよ。ていうか、同性愛者じゃない私も犯罪者ですよね、この理屈じゃ。たはは・・・。まいったまいった。
でも、彼らは「自分たちが幸せになるのが恋愛と言うものだ」という考え方なので、そういう気持ちは素敵だなぁと思いましたー。そこで禁断愛に逝くのはちょっとどうかと思ったけどー。

メモ。

この攻め、どうやらペニス挿入されるのは嫌みたいなのです。なので、Hのとき、くじ引きで「受け」「攻め」を決めたのです・・・。で、挿入されるのが恐そうな攻めと、恐くなさそうな受けが印象的でした。・・・今更ですが、「受け/攻め」というのは、本当にアナルセックスの挿入で決まるものなんですね、少なくとも対外的な解釈としては。これを腐の言説空間ではなく、BL作品内部で直接行うことの意味ってなんなんでしょう。タチと攻めネコと受け、これらは腐同士の間では同質と言うことでしょうか?
で、受けと書かれた紙と攻め書かれた紙を作るのですが、そこでの表記の仕方でこんなやり取りが・・・。

「守りじゃなくて受けらしいぜ」
「へー不思議だなー」

不思議だねー。