「上手な男の落とし方」は和みのホモだ。

上手な男の落とし方 (ダイヤモンドコミックス)

上手な男の落とし方 (ダイヤモンドコミックス)

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  • あらすじ。

雨の中、裕一は「あの男」を待っていた。
やってきた男は、意外なことを話しはじめる。
裕一が男に伝えたかったのは、
好きだという想いなのか?

歩道橋での幻想的な出会いと
その後を描く作品はじめ、
メガネや白衣をテーマに描かれた
傑作作品集!!

  • 帯・表。

言葉だけでは足りない!大人の男の恋愛作法は身体で語る!!
この熱い吐息を聞け

描き下ろし番外編コミック小冊子応募者全員サービスつき! この帯に応募方法があります

  • 帯・裏。

天野瑰先生描きおろしコミック小冊子全員サービス応募方法
1.このオビについている応募用紙に必要事項を記入してください。
2.このオビについている宛名カードに必要事項を記入してくださいお送りする際には、この宛名カードを使用して発送いたします。記入もれのないようにお願いします)。
3.400円分の郵便定額子為替(無記名のもので、2007年12月以降に発行のもの)をご用意ください。為替の右側についている受領証は小冊子が届くまで必ず保管してください。*定額子為替には発行手数料100円がかかります。あらかじめご了承ください。
4.定額封筒にあいうを入れて、封筒表に80円切手とこのオビについている住所カードを貼り、お送りください。封筒の裏にはご自分の住所・氏名を明記してください。
応募締切 2008年5月31日(土)当日消印有効
この全員サービスについてのお問い合わせは、下記にお願いいたします。
TEL:03-5452-1633
E-mail shoubunkan@himawari-pro.com *小冊子の詳しい内容と発送状況はこちらでもご確認いただけます→http://himawari-pro.cocolog-nifty.com/

ふぅ。…しかし、ほぼ正確な記録として一応は帯の内容を毎度書いてますが、ここまでする必要があるのか疑問になって来た…というのは気づいてはいけない疑問。

BLレビュー。

今回で5冊目らしい天野作品。ところでこの方同郷かと思いきや神奈川出身らしい…。あれー?と、それは置いといて、最近ハズレが多い中、コレはさすがのさすがでヒット作品でありますよ!なんてったって、今回は前作のホームズ作品のよなローカル向けではなく私の欲する所の「ポップ」系BL(本人談)としての天野作品ですからね!私との相性は抜群v 私的にはきっちり布教しておきたい作家さんの一人ですが、私の拙い文才と教養ではこの方の魅力をズバッと言い当てる事は絶対不可・・・っ。とは言っても、小冊子企画が出るほどだから実は人気らしい天野さん。よって、私が今更プッシュする必要もないのかも…?
とまあ、そんな言い訳に気を良くして、私としてはただただ涎を垂らすだけの以下文章。今回の私のレビューは究極的に役立たずです。えへへ、ごめんに?
で、何が私的に美味しいかって言うと…悪いね、みもふたもないけれど男(漢)の容姿が爆発的にイイ!表紙でも分かるように、この方の描く攻め様(or受け君)は美形と言うよりは正に「美丈夫」。野太い男達の交接はひたすら美味と言うもの…。そして、どこか懐かしさの匂う趣のある作風(+モチーフ)と合った彼らのビジュアル(制服込)は、私の中のゲイゲイしいDNAに直接働きかける!
ソレとあいまって魅力的なのがキャラクタの砕けた不健全さ…、そして(下半身が?)だらしないながらも男の甲斐性を感じさせる恋の情熱。帯でもあるように、彼らの恋愛模様は最早言葉では言い尽せないムードがある。その動向を見ていると、彼らの織り成す奇妙に明るい(否、暗さすらもあったが。)不敵な世界に呑み込まれる…。各話、静かな雨のよにシリアスな顔や滑稽極まりないコメディチックな顔も同時に持ち合わせるのだが、どの話のキャラクタもホモエロティックな欲望に大変熱を上げている。そんな上昇指数全開な彼らの行方を阻む<常識>などありはしないのだ!
しかしかかし、彼らにも社会正義と言うものはあるらしく、『ブレークスルー』や『永遠の安息(レクイエム・ターナム)』では、キャラクタの人生において“不良の更正”が一つのテーマになっているらしい。ただ、そうした“更正”こそが“ホモエロティックな絆”に成っている訳で、やはりそこが美味しい。
そうそう、『永遠の安息』は展開が読めるとは言え萌える作品。あれは確か西田東さんの『もろとも』に収録されていた、ヤクを持って教会に逃げ込んだヤクザと牧師の話と共通点が多い。たとえば受けが攻めを殺そうとする所とかね。だけど彼らの場合、更正のために辿り付く結末が“自分達の持つ過去との決別と、それによる安息”なわけで、西田東節とは異なる「粋な人間臭さ」を感じる。
そんな彼らの辿るストーリー展開は絵柄に反して割りとベタなもの(『恋のキ・セ・キ』の考古学研究所で巻き起こる凸凹カップルや『アフター5はAM4時』のゲイバーでの店員と客の恋愛劇等)。ともあれ、『恋のキ・セ・キ』の千畝のように麗しき受けへのご奉仕よりも自分の快楽を優先する事に何の悪気も持たない素直な放蕩っぷりは、個性的な味わいと言える。ええい、この素敵な悪漢め!
千畝(攻め)は年上の研究者に惹かれて研究会に入会するのだが、雫(受け)の方は大事な土器を彼に潰された恨みから毛嫌いしている。そこで、教授にこう指摘↓され、はたと“何か”に気づく。

「雫くん…千畝くんのコトずいぶん気にしてるんですね…僕なんか一緒に入った女子の方が気になって仕方ないのに…」

「俺だって女の子が好きですよ!」「そうですかねぇ」「そうですよ!」と、深層意識のホモセクシュアルな欲望にびくつく受けですが(笑)、当然攻めが追い討ちをかけます。彼はバカ正直に「土器はどうでもいい、雫さんだけが好き!」と告げる。受けは男からの告白に驚き、男同士と言う理由で攻めの気持ちを疑いさえする(「やっぱり女が好きなんじゃないか!」)。しかし攻めはやはり男の雫を選ぶのです。攻めが言うには「あまりに綺麗(<へぇ、あの受けは綺麗なのか…。)なあんたに一目ぼれしてから他の女じゃ勃起しない」らしい(雫はお前にとって女なのか!?)。終始こんな具合でして、大事な所で彼は率直なまでに「自分の勃起(性的欲望)が愛の証拠だ!」と言ってのけるのです!そして受けも受けで、結局彼が攻めへの恋愛感情を認めるのはセックスの時…。二人の愚直なまでのリビドーがホモフォビアを打ち負かし、恋愛と相成るわけだw
それから『試験管♥恋人育成法』だが、研究所に返品されてきた試験管ベイビー攻めというヘンテコリンな設定も、持ち味である自由な快楽犯のノリで、不毛の大地を明るい陽光で染め上げます。ゲイもいれば非ゲイもいる本短編集ですが、これはもう「あっぱれホモ野郎!」と言った所。

ところでこの漫画、二箇所で台詞に()を付ける。「朝までつき合ったのに(忘れるなんて)冷たい」他。なんだろう、漫画でこんな書き方をわざわざするなんて。あと、彼らの語り口は全体的にちょこっと非・現代作品風なんですが、こういう少し風変わりなテイストが乙な渋みでイイ。
表題作は

俺はこの場所でずっと誰かを待っている おかしな話だが誰を待ってるのかは―――わからない ただわかっているのは俺がその人物にどうしても会わなければならないということだけ―――・・・・・・

こんな語り口から始まるのだけれど、何故だろう、今回の天野作品の構成には洒落た印象がありつつも取っ付きにくさがなくて、読み応えも充分だ。力のある作家さんだと私は思うのです。(まあ、ハズレがなかったわけじゃないけどー。)
多様なジャンルを力強い筆意で取り扱い、不敵な享楽主義によって時には無様に時にはいぶし銀に駆け出す至高のホモエロ漫画。私自身もなんか良く分からんけどオススメです!