「シュガーミルク」レビュー。

シュガーミルク (マーブルコミックス)

シュガーミルク (マーブルコミックス)

  • あらすじ。

俺たちは物心ついた頃からいつも一緒で今までがそうであったようにこれからもそうなんだろうと思っていた。けれどその関係が少しずつズレてきたのはもしかして俺の所為なのかもしれない…。
せつない気持ちが胸に響く7作品を収録。史上最高のボーイズラブストーリーがつまった蛇龍どくろ待望のファーストコミックス。

素朴な味わいとは思ったけど、「史上最高」、大きく出たなぁ。

  • 帯。

どうしよう、お前がいないとムリ。
なりふりかまわず、まるで思春期の子供みたいに。この胸の痛み俺は気づかない。

Rentaでちょい読み出来ます。↓
http://renta.papy.co.jp/renta/sc/frm/item/119/

BLレビュー。

新刊ではないのですが、先日再読したのでレビュー。
えぇと、絵柄と作風の説明をしますと、九號さんと高城たくみさんを掛けて2で割った後に、小鳩めばるさんスパイスを振りかけ、東京漫画社のオサレ臭さを添えたフェレッシュでスウィートな味わい。<意味不明。
ストリート系?とかのファッションが素敵ー。だけど、実を言うと、ストーリー性はすごいフツーな少女漫画テイストだったりします(どの少女漫画と言えばいいかはシラナイ…;)。んで、「BL」ジャンルとしても特に新しい物でもないですね。ただ、最後の「冬を待つ季節」でこのコミックスのバラエティが増えていますし、キャラクタの活き活きとした表情などが、完成度高いなぁとおもいました。全体的にポピュラーな短編集で、「オトコノコ」の可愛らしさや、氏の絵柄が好みならオススメ〜。

以下ネタばれ。(最後にラストシーンの台詞をメモで書いちゃうので伏せます)
「ホワッツユアネーム」
ちょい読みを参照。恋愛未発達なEDですが、主人公(コンビニ店員)のクシャっと崩れた泣き顔は必見!萌え☆

「十五歳」
女の子に間違われた後輩とバスケ部所属の先輩の一目惚れ話。甘酸っぱい!この後輩ちゃん、小悪魔的というよりはイタズラッ子っぽくて、とても愛らしいv 友達に対して思わせぶりなイタズラをしちゃうのだけど、ここで周囲の男女の動揺が面白い。男でありながら、自分の性的魅力で遊んでる(!)感じ。ところで、友達にイタズラ返しされて「かおはやめてってゆったのにんー」て台詞が好きw私、こういう小ネタ大好きみたいです…。
先輩が練習でゴール決める所より、勢いアマって壁に衝突しかけるところがカッコイイ〜。萌え☆

「虹の残り香」
なんか『ルチル』風…。爽やかにファンシーな雰囲気かと思いきや、淡く切ない恋物語でした…。「魔法使い」のような不思議な生徒と、担任教師。教師という大人の発言は恋愛的「エゴ」であり、少年はその非凡な知能ゆえに、そして大人の事情により遠く離れていく存在で、「教師」と「生徒」の甘いひと時は季節の移り変わりと共に一瞬で霞みゆく。結局二人の恋は未来に持ち越される<運命>、…ということかしら?

「MILK」「SUGAR」
表題作ですね、黒髪の子(翔)がもう山本にしか見えないよ…。幼なじみモノ。
「ホモじゃなくバイ」の翔とホモフォビックな太一。高校卒業後に太一の前から姿を消した翔、彼らはカラオケのバイト先で再会。太一は酒に酔って、翔に「ホモのセックスってどうすんの?」と聞く。ここでのセックスを見ると、太一に思いを寄せているバイの翔を、ノンケが自分のセクサロイド扱いしている漫画かと思った。けれど、太一自身が今まで翔を追いかけてきた存在であり、また、あのセックスにしても「俺なんか酔った振りして友達を誘うような奴だ」と告白している。
ただ思うのは、同性の友達とセックスする(近づく)のに、ノンケの太一が「ホモのセックスって・・・」とか「ホモがうつる」とか、どうしてホモフォビックな発言をしなきゃいけなかったのか?ということ。
太一の自認はおそらく異性愛男性に近いものであるが、“異性愛者として”“「ホモ」を嘲笑わなければならない”という規範があるように見える。彼(ら)がもっとスマートに両思いになれなかったのは、こうした規範があったからではないか。そして最後に彼らの間で確かなものとして描かれるのが、“幼なじみとして”の絆だったりする…。
バイ表象にしても、もうちょっと考察してみても良さそうなテクストですね、うん。

「冬を待つ季節」
なんか潔い…。とにもかくにも、モデルのヨーイチが仲村に見せつける最後の「ワンシーン」が、とても潔い…。
昔、カメラマンの仲村が道端で拾ったミステリアスで「恐ろしいほど美しい男」、ヨーイチ。ある日、仲村は娘に呆れられながらも突然旅に出かける。<ヨーイチも付いて来る。
「旅」のエピソードと、彼が告げる無常の精神は、カメラマン仲村の抱える無力さ(怯え)を包括して救い上げているようだ。…よく分からんけど。
彼らの愛はカメラマンとモデルの形なのかもしれないが、なんだかダイナミックな愛の形だなぁと感じた。

メモ。

「太一ちょーエロイ ぞくぞくする…」
「…ふ ヘンタイ」
「うん だって俺『愛してる』なんて言えちゃうんだぜ?」

今まで太一が使ってきた「ヘンタイ」という言葉は、侮蔑としての「ヘンタイ」であったのだけど、この「ヘンタイ」は語り尽くせない熱を帯びた「愛」として表象されている。コレをどう評価するかはさておき、興味深い表現な気がしました…。