「僕の知るあなたの話」を読んだような気がする。

拍手ありがとうございます!わーい、一週間くらい前からweb拍手を付けたんだけど、貰えても週に2、3個かと思ってたのでウレスーです^^^^v
あ、もしもコメントを頂けたらこちらで更新する際に一緒にお返事させていただきますね。・・・大丈夫、もし拍手にコメントがあったら無理にでも更新してみせますから、安心してご利用ください(笑)

さて、今日読んだのはこちら。

僕の知るあなたの話 (バンブー・コミックス 麗人セレクション)

僕の知るあなたの話 (バンブー・コミックス 麗人セレクション)

  • あらすじ。

母親から虐待を受けている高校生・松本波亜人(まつもとはあと)は、いつも優しく接してくれた母親の元恋人・渋沢(しぶさわ)のことが大好き。ヤクザである渋沢にその想いを告白した日から二人の関係は変わり始め…。そして数年後、波亜人はホストとなって渋沢と同じ街で働き始めた。
切なくも温かい愛を描いた表題作シリーズ3部作ほか、高校生やサラリーマンの恋模様に加え、お楽しみ♥の描き下ろしも収録した鈴木ツタ作品集!!

「告白から関係が変わり始め・・・」とありますが、本質的には変わらないことがミソだったのではと思います。

  • 帯表。

あなたの居るこの街が僕の楽園。

初めてのキスをした日を覚えていますか?
・・・切なくも温かいホストとヤクザの恋物語

描き下ろし番外編ほか、特典いっぱいの最新コミックス!!※詳しくは裏面をご覧下さい。

  • 帯裏。

コミックス特典!!
①描き下ろし番外編収録
②ケータイ待ち受け画像プレゼント
この帯をめくった部分についてるQRコード、もしくはアドレスを直接入力してプレゼントへアクセスしてください。
※書店・コンビニなど店舗内でのQRコードのご使用はくれぐれもお控えください。
③麗人コミックスフェア開催
指定のコミックス1冊と麗人本誌(1月号もしくは3月号)をご購入いただいたご希望者全員に特製図書カードをプレゼント!
※詳しくは麗人本誌もしくは竹書房HPをご覧下さい。
竹書房HP→http//www.takeshobo.co.jp

BLレビュー。

わーーい、短髪ガタイオッサン受けやー(>∀<)ノ" ・・・表題作他。
わーーい、短髪不良小僧受けやー(^д^)v ・・・『声が届くのなら』。

てか全員素敵イケメンパラダイスやーwww目の保養じゃあ〜♪
なんていうか、どんどん進化してるよね鈴木ツタ漫画!物語性が高いお!
表題作以外の紹介。
『ソテードオニオン』は、二人は親友だったが、受けから紹介されて付き合った女の子を攻めが振って、告白してきた・・・という馴れ初めを時系列交錯させて描いた話。
『声が届くのなら』は、ケンカいっぱいしてる高校生が、ある日自分に憑いた侍の背後霊と接触できるようになって・・・というコメディタッチの話。
『かみさまの目をぬすんで』は、学生時代に男の学友から告白されそれを悪し様に拒否った思い出を引きずる冴えない会社員が、男前で生真面目そうな見知らぬ同僚から告白されたので、とりあえずお互いを知ってみましょうか・・・という話。
なんだかどれもゆったりユルな話でいて、胸が少し熱くなるエピソードが味わい深い、そんな青春(人生)物語でした。展開自体はオーソドックスなんだけど、上等なBLって感じv

第一の印象としては、造形そのものを含めてどのキャラクタも魅力的!ツタさんの描く、目力を感じる表情豊かな彼らのウブな恋物語から目が離せません!

第二に、このコミックスでは、ストレート(のような)男性同士の恋愛こそを美味く描いたって雰囲気がありました。「主にヘテロな経験しかない男性が例外的に男性とする恋愛とは一体・・・」的なドキュメンタリーっぽい印象でした。

第三に、どのキャラクタも結局は情に厚く、信頼が恋愛に直結した方々ばかりなんだなーと思いました。

私からすれば、結局くっ付きそうにもなかった<二人>が愛し合うようになったのは、元から非常に相性が良かったからってだけのように思えたです。んで、その信頼関係を続けるのに「恋人」という関係性が一番合理的だったから付き合いだした、ってだけの話だと思えたです。


・・・で、今回もあとがきが面白かったです。内容を要約すると、
思えば遠くへ来たもんだ・・・
というもの。


ちなみにカバー裏にはまたツタクオリティーな趣向が凝らしてあります。数々の職業が並列された図に、自分が結び付けたい職業と職業に線を引いて組み合わせるんです。
で、あとがきで、ツタさんはそゆ属性組み合わせ萌えを「前から乗ってみたかったアトラクションに乗って冒険する気分(しかしいざ描いてみると違うモノが出来たり・・・)」と表現なさっていて、成る程と思った。
私は属性組み合わせ萌えがない人間なんですが(高校生モノは好物)、ホスト×ヤクザ萌えに目覚めたツタさんは、きっと遠くへ行かれたのだなーと思いました。いってらっしゃい、ツタさん。

以下ネタばれyo!

nodada's eye.

母親が連れてくる男の中で一番優しかった渋沢(けれど多分少しの会話しかなかったのでは?)。そんな彼に信頼を置いた波亜人。渋沢も、彼が暴力を振るわれることに胸を痛めていた・・・。
亜人は渋沢の傍に居たくて、渋沢の所属する組に入って弟(正しくは弟分)になりたいと申し出るが、おつむが弱くポヤーっとした波亜人には似合わない、とシャットアウト。それでも渋沢は「いや、でもそうだな、俺もお前の事がずっと気になってた。またぶたれたらまっすぐ俺のところに来な」と手を差し伸べるのだが、、、そしたら感極まった波亜人はキスをしちゃう。彼にとってヤクザの弟分である事は、恋の手管と同じだったってことだろうw

そんな波亜人に、異性愛男性向けのエロ本を片手に「性教育をやり直してやる!」と断言する渋沢だったが、その内容はこんな感じ。
男の3ヶ条

  1. 男は男にチューしてはならない!
  2. 男は男の布団に潜り込むな
  3. 男は男を好きになっちゃだめ

とまあ、こんな具合のヘテロセクシズム全開な男ルールを波亜人に守らせつつ、波亜人の就職後も寄り添い生きていた二人。
しかし、その渋沢ときたら、自分からすんなり3ヶ条を破って波亜人と同棲しようと持ちかけ、ついには波亜人の股上に乗っかかる始末。

顔だけが取り柄の可哀想な子供 オレは何故かあいつを見捨てられない

「違うよバカ 一緒に住もうって言ってんだよ なんなら 3ヶ条も取り消していいぜ」

オレはおまえを一人にはできないし オレも一人になれない 何かが変わっておまえがおまえじゃなくなるのが怖い オレは昔からおまえが悲しむことに耐えられない

一見マッチョで堅固な男なのに、この手の平返しには拍子抜けさせられる・・・。
実は二人ともヘテロセックスの経験はあるらしく、波亜人にしても客相手とのヘテロセックスに抵抗はなさそうだ。渋沢も始めて波亜人とセックスした時「なんか年増のババアになった気分」と、ヘテロっぽいセックス観を呟いていたり、彼らがヘテロなバックボーンに支えられている事が所々で示めされる。
また、隠し事を悟らせないため渋沢からセックスを誘うシーンでも、少し興味深い台詞があった。「年寄りって訳じゃないからペニスもいじっていればそのうち勃つ」というこの台詞は、ややもするとゲイネスの否定をも意味していたのかもしれない・・・(?)。

セックスの際、渋沢の擬似真珠入りペニスに話が及んだ。

亜人「入れたらみんな喜んでくれた?」
渋沢「・・・さあ 演技かもな 女は怖いっ・・・から」
亜人「オレも入れようかなぁ」
渋沢「やめとけよ・・・ おまえがこんなえぐいのつけてたら女は引くぜ」

男同士で付き合い始め、二人でセックスしている最中でさえ、(波亜人がホストで女性客を相手にしている故か)彼らの頭には女とのセックスが想起される。そこでは終ぞゲイネスが見当たらないのが印象的だ。

最初、このコミックスに登場するキャラクタを「ストレートのような」と言ったけれど、そんな回りくどい表現をした理由は、異性愛要素を強調しつつも異性愛に収まりきらないけど、同時に異性愛規範の無批判さどころか共鳴性すら匂う故にクィアとも言い切れない彼らの曖昧さがあったから。しかも当人たちは自分達の愛に名前を付けないので、のような・・・としか言い表す事ができない。バイの恋愛経験ではなくゲイの恋愛経験でもなく、さりとてストレートなヘテロ男性の恋愛経験とも言い切れない、しかし実際にどこにでもありそうな、男同士の経験が描かれている。そんな感触が伝わってくるのだ。

彼らの行動と観念は、はっきり言って支離滅裂なのだ。
それから、二人の関係が、渋沢の弟分にバレた時もそう。

「アニキイイイ やっぱり寝太郎とデキてるんじゃないっすかあぁ!」
「お前はまた何勝手に入ってきてんだよ」
「だって玄関鍵かかってなかったス 報告しようにも携帯またつながらねぇし」
「電源切ってたんだよ 察しろよ」
「察しろって・・・   オ オレ アニキ好みの男じゃなくてすいませんっ」
「あーーーうるせえ ほっとけ」

ここの「察しろ」と言った後に、裸の彼ら二人に「男」「はだか」「はだか」と矢印が三つ示され、そして「察しろって」・・・と戸惑う弟分は、彼らの「男」の「はだか」と「はだか」を見るや、「渋沢が好みの男を連れ込んでいる」と「察した」のか、兄貴分に奉仕する立場として「自分がその“好みの男”ではなく、ゆえにゲイかバイのように見える兄貴の役に立たない」と考えたようだ。ここで弟分からは二人の馴れ初めやアイデンティティの不可視性は知られようもなく、ただ彼らがゲイやバイ同士の関係でしかないように見えたというわけ。ここでは、二人の関係がただ「ゲイ・バイ男性の経験」に回収されてしまい、実際の曖昧な性愛が見えなくなっている・・・。他人から見れば大差ない、という事だろう。

ところで、渋沢にしろ弟分にしろ、ここではあからさまなホモフォビアは見出しづらい。あからさまなホモフォビアがないのにもかかわらず、男の三ヶ条なるものが示されたり、それが途中で反故にされたりする様は、やはり支離滅裂に映って仕方がない。彼らの経験は、非常につかみ所がないと私は感じるんだ。


さて、渋沢は波亜人を「土の中の種が欲する地上」だと喩えるのだけど、ヤクザな世界で生きてきた自分にとって唯一変わらぬ安らぎを与えてくれるのが波亜人だった。そして彼との関係を渋沢は、「今はこの生温い関係が一番楽になってしまった、それがどんな女よりタチが悪い」と認識している。一見渋沢はヘテロのようでよく分からない彼らにおいて、その関係性は「女よりタチが悪い」と表象される・・・。これは果たして何を意味するのか。
自身としてはヘテロでありながらも、ヘテロから逸脱した関係を渋沢は欲している。しかし、それがゲイ的経験であるとかバイ的経験であるとかは、結局説明され得ない。ただ、ヘテロによるヘテロを排した(ゆえに)<例外的>で「タチの悪い関係」だと意味づけられている。それは、要するに「ヘテロなのに男同士でも愛しちゃうんだよすごいでしょ」という物語性なのだろうか?


そして、そんな彼らの関係を急接近させたのは、あたかも波亜人の母親の死であったように見えたが・・・。

オレは単純に自分の口で伝えられなかっただけ あいつを傷付けるのが自分じゃなければ良かっただけ あいつを傷付けて自分が傷付くのが嫌だっただけ
亜人「母さんが死んだの知ってて黙ってたんだね だから優しくしてくれたんだね オレすっかり勘違いしちゃってた 慰めてくれてたんだね」
違う
亜人「渋沢さんは優しいから」
そんなわけねぇだろ
〔・・・〕
お前にだけ優しいのなら お前だけ傷付けられないのなら 
渋沢「お前が欲しいだけなんだ お前に嫌われたくなかっただけなんだ 優しいだけであんな真似できるわけねぇだろ オレはただきっかけにしたんだ ずっと踏み切れなかった オレはお前が お前の事が・・・」

と言うわけで、なんかよく分からないけど「優しいから」でも「母親の死に同情したから」でもなく、「ただ好きだから」、とようやく気づくのだ。
・・・まあ、ここまで読むと私の場合は、最初の「結局二人は相性が良かっただけ」という結論に行き着くしかナイわけです。

これは『ソテードオニオン』にも通じるところだ。

「身体検査来週だって ウーーン オレまたデカくなった気が」
「ええー おいてっちゃやだよ」
「なにそれー 身長の話でそこまでか」
「ううん 全部だよ なーんでも」

「オレも彼女欲しーな 毎日つまんないんだもん」
「そんなヤケっぱちじゃ続かねーっしょ」
「ネギちんいねーからつまんねんだよ?いいじゃんそんくらい 中に一生続く子いるかもしんねーじゃん」
「そんなカンタンに見付かるもんじゃねぇだろ」
「ネギちんと楠本だってわかんないじゃんっ」
「お前が紹介した子だろ オレはお前を信用してるよ」
「こんな寂しくなるなら紹介しなきゃよかった」

受けは攻めに女の子を紹介し、実際女の子と攻めは付き合い始めるのだが、そうすると「ともだち」である自分は蔑ろにされる。が、攻めは本来受けの事が好きで、その気持ちは明かせないので、せめて、「受けからの紹介だから」女の子と付き合っていたのだと言う。こんな寂しくなるなら紹介しなきゃよかった・・・と愚痴る受けに彼は。「じゃあお前はセックスとかデートがしたいの?」「彼女とは別れてきた、だから付き合おう、だって世界で一番好きだから」

で、受けは、攻めが自分に告白をしてくれたことを、「ともだちの一等から 彼の中の一等にしてくれた」と表現している。要するに、関係性を度外視した上でも「一等」になろうとすれば、「恋人」というポストが一番手っ取り早く、そして合理的ということだろう。
確かに、常に相手にとっての一番で、一対一の排他的関係性こそを望むなら、今の社会が制度化している「恋人」がとても収まりイイ気がする。
つまりこの場合の関係性において、元より彼らは「そんなカンタンに見付かるもの」ではない関係であり、「“彼らが恋人になった”のは、想い合い、絆を深め合った“結果”に過ぎない」、という風に表象されているんだと私は思う。



・・・・結局、表題作の渋沢と波亜人が愛し合う理由はよく分からないのだが、それをどう解釈するのは読み手次第だ。
単に人間性の相性が良かっただけかもしれないし、もしかしたら相手が好みのスタイルだったから(彼らがゲイ?バイ?だったから)かもしれない。
何れにせよ、人が人を好きになる理由なんてどうしても言語化できないのよねぇ。ゆえに彼らのようなセクシュアリティと実際の恋愛関係が、合致して居るのか居ないのか分からない関係性に対しては、とりたてて「純愛である」とか「ヘテロ(<決め付け)が男同士で好きあうなんて、何かとてつもない理由があるんだ!」と意味付けることすら、容易なんだろう。
このストレートな異性愛が基準の社会において、二人の関係を例外的に映し出そうとする読みにテキストが無抵抗なら、なおの事・・・。


しかし、どちらも仮にとは言え女性が二人の関係を急接近させるファクタだった、というのが、反ヘテロ制度的なのかミソジナスなのかって感じで印象的ですねー。


メモ。

『ソテードオニオン』から。

「何でいつもオレに女役させようとすんの」
「かわいいから あと、 だって玉が引くから 俺が押すしかないじゃん」
「うそだ ネギちんが押すから俺が引くんだ」
「へへ ばれた?玉ちゃんって何か勘違いしてるっぽいね オレは本当に玉ちゃんの事好きなんだよ」